2005年から12年間をサンフレッチェ広島で過ごし、数々のゴールとタイトル、あふれるクラブ愛でいまも多くの人々に愛されている佐藤寿人氏。共に紫のユニホームを着たチームメイトがピッチ上で見せた才能、意外な素顔などを連載『エースの証言』で振り返っていく。

2012〜2018年に広島でプレー、J1制覇にも大きく貢献した千葉和彦。

◆最初のキャンプから同部屋。フィーリングが合っていた

 チバちゃんとの出会いは、アルビレックス新潟からサンフレッチェに移籍した2012年。

 正直、どんな選手なのかはあまり知りませんでした。僕は新潟との相性が悪いわけではなかったので、強く印象に残っていなかったのだと思います。

 でも一緒にプレーしてみると、こんなにいろいろなことができるDFなんだと感じました。特に驚いたのは、攻撃のスイッチを入れる縦パス。“パスを出しますよ”というボールの持ち方をせずに出すので、相手は対応しづらく、味方だけが分かるようなパスなんです。僕自身も加入当初は「見えていないかな」という状況でパスが来て、「ああ、見えていたのか」と思ったことを覚えています。

 ピッチ外では、最初は様子を見ていたと思いますが、すぐに自分を表現して、あの明るい雰囲気をチームに持ち込んでくれました。最初のキャンプから同部屋だったので、すぐにキャンプ中のオフも一緒に過ごすようになり、出会った当初からフィーリングが合っていました。

 ピッチの内外で、たくさん話をしました。おちゃらけているように見えて、実はいろいろなことを考えている。新潟の選手として見ていたサンフレッチェの印象や、それを踏まえて「こういうふうにプレーしたら相手は嫌ですよね」といったことなど、中にいると分からないことを客観的な視点で教えてくれて、とても参考になりました。