今シーズンもカープは多くの若手選手が一軍で猛アピールを見せている。その中でも守備力を武器に存在感を見せつけているのが、プロ2年目の矢野雅哉だ。

 課題である打撃においても、8月16日にプロ初本塁打を記録するなど、素晴らしい活躍を見せた。ここでは、一軍定着を目指す矢野の思いに迫る。

チームがコロナ禍に見舞われた8月16日には、一軍に緊急昇格。プロ初本塁打も放つ活躍を見せた矢野雅哉。

◆一軍で見守ってきた小園の守備。「まだまだ自分は負けていない」

 守備に関しては入団当初から一軍クラスという呼び声が高かった矢野雅哉。名門・亜細亜大で鍛え上げられた守備力と強肩を生かした動きが、担当スカウトの心を奪い指名に至った。

 「遊撃手は守備の中心にいるポジションです。三遊間の深いところから一塁に送球し打者をアウトにするなど、魅せるプレーができるのも遊撃手の醍醐味。そう考えると、やっぱり華のあるポジションだと思いますね」

 守備力は、失策数や守備率で評価されることが多いが、遊撃手は、中心であるがゆえに他の野手に比べて考えることが多い。先を読む力も名遊撃手には欠かせない要素だ。

 「二塁手として出場するときもそうですが、相手打者の傾向を頭に入れたうえで、投手の球種や打者のスイング軌道を見ながら細かくポジションを変えています。ヒットコースを阻むために、場面ごとに瞬時に判断していかないといけません。そういう意味でも、遊撃手は考える難しさと向き合っていくポジションだと思っています」

 矢野の遊撃手としてのこだわりは強い。それを感じたのは一軍遊撃手のレギュラー小園海斗について聞いたときだ。

 「小園の動きは素晴らしいですが、守備位置や捕球の仕方を見ていると、自分ならこうしていると思うシーンがよくあります。考えて準備するという部分においては負けていないと思っています。小園とはよく話しますよ。守備から帰ってきたときに、今の動きはどうでしたかと聞かれることも多いです。また、僕も小園のプレーから学ぶことがたくさんあります。切磋琢磨しながらお互い上手くなっていきたいと思っています」

 一軍では年下の小園のプレーを、常に自身のプレーと照らし合わせながらベンチから見守ってきた。また、自らが失策した際には、なぜミスをしてしまったのか周りの選手に意見を求めることも厭わない。それは、意識や思考がプレーの結果に左右されやすい遊撃手を守っていくうえで、矢野にとっては当然のルーティーンなのかもしれない。

「自分の考えだけだと視野が狭くなります。打撃にしても守備にしても、結果を残すために良いものは柔軟に取り入れていきたいですし、そのためにも周りからいろいろ話を聞きながらやっていくことを心がけています」

 一軍では、二塁や三塁も守り、代走としても出場する。ただ、矢野が目標にしているのは紛れもなく遊撃手のレギュラーだ。遊撃手のポジションを奪い取るため、矢野の挑戦は続いていく。

《プロフィール》
矢野雅哉●やの まさや
1998年12月16日生、大阪府出身
171cm・70kg/右投左打/内野手
育英高-亜細亜大-広島 (2020年ドラフト6位)