8月29日終了時点で56勝62敗3分。3位まで1.5ゲーム差の4位につけるカープ。ペナントレースは残り22試合となり、ラストスパートの様相を呈してきた。OBの笘篠賢治氏に、8月23日からのヤクルト、巨人との6連戦を見て感じたことを語ってもらった。

8月26日の巨人戦で今季初の猛打賞を記録した大盛穂

◆逆転負けを喫した試合はリーグ最多。もう一度、“逆転のカープ”へ

 8月26日からの巨人3連戦を2勝1敗と勝ち越して、3位の阪神まで1.5ゲーム差。なんとか粘れていますが、8月中旬に6連敗を喫したときには最下位転落も危ぶまれました。

 なかでも逆転負けの多さが目立ちますよね。8月23日からのヤクルト3連戦も、初戦、2戦目ともに、先制はしたもののひっくり返されてしまいました。これで逆転負けは今季すでに28試合。これはリーグ最多となります。“逆転のカープ”ではなく、“逆転されるカープ”となってしまっていて、これが今の順位にもつながっているように思います。

 8月23日のヤクルト戦。2点リードの6回裏に村上宗隆から逆転3ランを浴びたシーンですが、1死一二塁で2球連続でインハイのストレートを投げての一発でした。走者がいない場面でインサイドを意識させて攻めるのはいいのですが、本塁打が出たら逆転というケースだっただけに、もう少しボールを散らしてもよかったように感じます。

 データやベンチの指示もあると思いますが、バッテリーの攻めがちょっと正直すぎた感じがあります。当然打った村上もすごいですが、インコース一本にヤマを張られて打たれた感じがするだけに、非常にもったいなく見えました。

 ただ、そんな中でも若手が必死でプレーしています。秋山翔吾が、8月23日に発熱で一軍離脱して、その翌日に上がってきた大盛穂がいきなりスタメンで本塁打。そして守備でも本塁への好返球を見せました。さらには巨人戦からは一番センターでスタメン出場し、躍動しています。

 秋山の加入が決まったとき、大盛は大きな危機感を感じたはずです。こういう状況ですが、チャンスが回ってきたことには変わりないですから、持ち味をアピールできた点においては、「よくやった!」と褒めてあげたいですよね。

 育成から這い上がってきた大盛だけに、野球に対する取り組みが報われる瞬間というのは、こちらも見ていてうれししくなります。

 私もプロとしてやってきた中で、瀬戸際の状況というのを何度も経験してきたので、ここでダメならまた二軍に…というところで結果を残す難しさは痛いほど分かります。一軍の試合で出た良い結果を自信にして、このまま暴れ回ってほしいですね。

 矢野雅哉も使いたいと思わせるプレーを見せ続けてくれています。このまま打撃を磨いていけば、小園海斗を脅かす面白い存在になりそうです。次世代のカープ内野手でいくと、羽月隆太郎も期待の若手の1人です。若手の力で、再度チームに勢いをつけて9月以降も戦っていってもらいたいです。