カープの歴代ショートの中でも、球団史に名を残す経歴を持つ野村謙二郎氏。トリプルスリー、ベストナイン、ゴールデングラブなど数々のタイトルを獲得し、走攻守三拍子そろったショートとして活躍した。

 ここでは、野村氏の独占インタビューをお届けする。現役時代、名手が胸に刻んだ守備・打撃への意識とは。

 インタビュー第1回はこちら

1995年にはトリプルスリーを達成した野村謙二郎氏。

◆史上6人目の『トリプルスリー』を達成

─1995年にはショートとしてトリプルスリーという大記録を達成されています。打撃面への意識はいかがでしたか?

「入団したのがカープでしたので、髙橋慶彦さんであったり、正田耕三さんであったり、二遊間を守る選手が上位打線で打って走ってという野球を見ていました。それだけに自分もそういうふうに打てる内野手・ショートにならなければならない、先輩方の成績に追いつけ、追い越せという意識の中でプレーをしてきました」

─守備に対してはどんな意識で試合に臨まれていたのでしょうか?

「試合が始まるとき、一番最初に考えていたことは、『今日のゲーム、何本打ちたい』ということよりも、『自分のミスでチームに迷惑をかけない、投手の足を引っ張らないようにする』ということでした。本当に全ての試合でそう思っていました。もちろん『エラーはなしで良いプレーをして、ヒットを3本打って、打点をあげてチームが勝利する』ということが野手にとってパーフェクトゲームです。まず自分がエラーをして負けたということには絶対にしないようにと考えていました」

守備でも高い貢献度を誇り、カープの内野を堅守した野村謙二郎氏。

─打撃より守備で活躍されるほうに喜びを感じられていたのですね。

「もちろん良い場面で打てて、良い守りができればそれに越したことはありませんし、選手はみんなそれを目指して常にプレーをしているはずです。ですが、仮に打てなかったときは『今日は打てなかったけれど、あの守備の場面で相手の流れを切ったな』と思うようにしていました。そこから『今日はどうして打てなかったんだろう』と考えるようにしていましたね」

─基本的には常に守備を重視してプレーされていたのですね。  

「そうですね。よく解説でも言うのですが、例えば菊池涼介が打てなくても“守備で打点をあげている”と表現させてもらっています。そういうところが菊池の凄さだと思いますし、指導する立場になったときに、彼のプレーを見ていて『今日は菊池の守備で勝った』とか、『今日の守備の活躍は3打点の価値がある』と感じていたんです。

 満塁でファインプレーをしたら3打点以上ですよ。ランナーが2人生還して、まだチャンスが続くところをアウトにして点が入らなかった。もし抜けていたら2点入って、まだピンチが広がるというところを切ってくれるわけですからね。

 菊池は今でも『打てなくても守りだけは絶対に』ということを口に出して言ってくれているようです。僕自身うれしいですし、そういう選手がいるというのは頼もしいですよ。想像を絶するプレーをしてくれますからね。彼はショートではありませんが、二遊間、守備の要という面で考えると良い選手ですよね」

 =インタビュー第3回へ続く=

<プロフィール>
野村謙二郎●のむら・けんじろう
1966年9月19日生、大分県出身。
1988年ドラフト1位で広島入団。入団2年目にショートに定着すると、長年にわたって1990年代のカープ内野陣をけん引した。トリプルスリーを達成した1995年にはショートとして球団初のゴールデングラブ賞を獲得した。走攻守三拍子揃った球界を代表するショートとして長年活躍し、2005年には通算2000安打を達成し、同年引退。
2010年から5年間カープ監督を務め、2013年にはチームを16年ぶりのAクラスに導いた。現在はプロ野球解説者として活動中。