◆満田が魅せた! GKとの華麗なる駆け引き

 野上と同様、茶島雄介も、守備に攻撃にとハードワークして、スキッベ監督の期待に見事に応えています。痺れるゲーム展開の中で、「今、攻めに行くべきか。行かざるべきか」をしっかりと見極めることができるのは、ベテランならではの技だといえるでしょう。例えば若い選手であれば、勢いに任せて相手を突破しに行くような場面もあると思います。チャンスになるかもしれない一方で、ボールを奪われてカウンターを受けるかもしれない、まさに一か八かという場面です。そうした局面でも、茶島や柏好文といったベテランたちは、「突破していける状態でもあえて行かない」、「味方が上がってくるのを待つ」……と、 〝緩急〟をうまく使い分け、ゲームをつくることができています。

 天皇杯・準決勝での柏のプレーにも、そうした〝緩急〟を巧みに使い分ける場面が随所に見られました。

 1ー1で延長戦に入り、勝ち越しの追加点を奪った後の場面もその一つです。パスを回しながら残り時間を稼ぎ、そうかと思えば相手の裏をつくような動きをするなど、サッカーをよく知ったベテランらしい、経験を活かしたプレーでチームを大いに支えてくれていました。柏の素晴らしい点としては、シーズンを通して出場し続けているということもあげられます。若い頃は、とにかく前に出て、仕掛けていって……という姿勢がよく見られていました。もちろん、今もその姿勢は健在ですが、そのアグレッシブさに加え、ベテランらしい 〝緩急〟の使い分けもより巧みになってきています。

 10月1日の浦和戦で満田誠があげた2得点は、どちらもスーパーなゴールでしたが、ここでは特に2得点目についてお話ししたいと思います。

 この日、満田が任されたのは、ゴールからやや離れた位置からのFK。ここで、相手GK・西川周作との駆け引きが始まります。西川としては、満田は味方選手に合わせてボールを出し、シュートを打たせると思っていたでしょう。あれだけの距離があれば、味方に合わせて蹴るのが普通です。ただ、満田は自分自身でシュートを打つことを選択しました。『GKの西川は、カバーするために前に出てくるだろう』と読んで自分でシュートを打ちにいった満田が、試合終盤の息詰まる駆け引きに勝ったということです。

 また、この試合での1点目となった森島司の得点も、相手に囲まれシュートを阻まれる中、倒れ込みながら粘って押し込んだ先制点でした。今シーズンここまでブレることなくやり続けてきた結果が出た、貴重な1点だったと思います。

 開幕からここに至るまで、全ての選手が自分に求められる役割を果たし、結果を出すために全力を尽くしてきたことは素晴らしいと思います。

 『誰が出ても勝てる』。

 それが、今のサンフレッチェの強さです。ここから先の試合では、これまで出場機会に恵まれなかった選手たちの活躍も見ることができるかもしれません。これからも期待して応援したいと思います!

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