異彩を放つナックルボーラーに、内野挑戦で飛躍したスラッガー……ここでは“光る個性”を持つ育成選手にスポットを当てて紹介。支配下登録を目指し鍛錬を続ける選手の思いに迫った。

 2021年育成ドラフト1位で入団した二俣翔一は、2022シーズンの春季キャンプでは初の一軍帯同を果たした。捕手から内野手へと本格転向した今季、打撃に、守備に奮闘する二俣の声をお届けする。

高校時代は通算21本塁打の打撃に加え、50メートル6.2秒の記録を持つ俊足も魅力の二俣

◆昨季から向上した打撃成績。ストレートへの対応に確かな手応え

 連日の固め打ち。シーズン終盤、背番号121が塁上を賑わすシーンが増えた。2年目の今季、持ち味の打撃を活かすため、捕手から内野手にコンバート。捕手は慣れ親しんだポジションだけに思い入れがあったことは容易に想像できるが、二俣翔一はその思いをバットで吹っ切ろうと取り組んだ。

「1年目のオフに、バッティングマシーンの球速をあげて、自分のポイントで振り負けないように打つことを意識して練習に取り組みました。まだまだレベルを上げていかないといけませんが、そういった積み重ねの結果、昨季よりはストレートを打ち返せている手応えがあります。また、練習からアウトコースの球も当てにいかないように心がけています。インコースでもアウトコースでも、どのコースに来ても強く振り切ることを意識して打席に入っています」

 昨季のシーズン序盤はアマチュアとプロのストレートの違いに驚いた。ストレートに照準を合わせて振り切っても、差し込まれてファールになることが多く、プロの投手が投げる力強いストレートを捉えることができるかがこの世界で生きていく術だと悟り、努力を重ねてきた。その昨季からの積み重ねが少しずつ実を結ぼうとしている。

「理想は楽天の浅村(栄斗)選手のスイングです。逆方向にも強い打球を飛ばせて、ホームランも打てる。自分も逆方向に強い打球を打つのが持ち味だと思っているので、浅村選手の打撃を目標にしていきたいです」

 昨季の秋季キャンプから取り組んでいるサードの守備にも慣れてきた。今季二軍ではサードでの出場がチームトップ。強肩を活かし、ホットコーナーを務めている。

「心がけているのは菊池(涼介)さんからのアドバイスです。今季の春季キャンプで『打球スピードの遅い内野ゴロは素早く捕って一塁に送球しないといけないけれど、サードは速い打球が多いのでしっかり捕って投げれば、お前の肩なら十分アウトにできる』と言ってもらったので、それは常に意識しています」

 今季は62試合に出場し、打率と安打数は1年目の数字から大幅に向上した。確実性が増した力強い打撃は、新しく就任した新井貴浩監督の目にとまる可能性も高いはずだ。

「内野守備もレベルアップしないといけませんが、チームからは打撃を求められていると思うので、まずは打つ方でしっかりと結果を残していきたいです」  

 どんな球でもバットを “強く振り切る”。二俣がこの打撃を貫き通したその先に、支配下登録の道が見えてくるはずだ。

《プロフィール》
ふたまた・しょういち
2002年10月21日生(20歳)、静岡県出身
180cm・75kg/右投右打/内野手
磐田東高-広島 (2020年育成ドラフト1位)

【今季成績(二軍)】
62試合 打率.246 49安打 3本塁打 18打点

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