新井貴浩新監督が就任したカープ。コーチ陣には新たに4名が加わった。他球団での経験を積んだコーチが加わり、チームに与える影響や新井監督についてOB笘篠氏が見解を語っていく。

(本文中のデータは全て11月2日の取材時点)

秋季キャンプでは、監督就任後、初めて選手たちの動きを確認した新井監督(写真は就任会見時)

◆新たな血を取り入れることで、カープの財産になっていく

 今回は新井新監督、新井カープについてをお話ししたいと思います。新井監督がカープに入団した頃、私は当時現役でカープ移籍2年目でした。私生活なども厳しく育てられたと聞いていて、真面目な選手という印象で、それがプレーにも出ていたように記憶しています。

 そこから実績を積み、阪神に移籍などいろいろな経験を積んで、この度カープの監督に就任しました。監督就任会見や、新ユニホーム会見の様子を見ていると、自然と明るく振る舞い、場を盛り上げられるところに、“らしさ”が出ていたと感じました。

 新井監督とのエピソードで覚えているのは私がコーチ1年目の春季キャンプでの出来事です。彼はプロ2年目ということもあり、守備練習では足を使い、バランスやタイミングなどを繰り返し練習する状況でした。

 同期入団の東出(輝裕)と新井監督との3人で天福球場に残り練習をしていると、長嶋茂雄さんが練習をご覧になられていました。すると長嶋さんが「新井くん、いまの打球に対して、このラインで取るなら、もう一歩前で取ってみようよ」と言われ、新井監督が前で取ると長嶋さんが「ナイスプレーだ」と褒めてくださったんです。その時、彼がうれしそうな顔をしていたことは忘れられませんね。

 結果的に新井監督はのちに、ホームラン王を獲得し、2000安打を記録する選手に成長しました。入団当時は、見た目も綺麗な打撃フォームではありませんでしたが、日々成長し、愛され、あのような記録にも、記憶にも残る選手になりました。

 来季の新井カープに目を向けると、新たなコーチが4名就任しました。中でも、藤井彰人や新井良太、福地寿樹と他球団で活躍した人選は、これまでとは違った空気や血を取り入れるという意味で大事だと思います。

 自分たちだけでは気付けない部分を第三者が入ることで、先入観なく良し悪しを見ることができます。“外から見たカープがどうだったのか?”など情報を取り入れ、技術はもちろん、選手の性格を知るというのは、チームにとって大きな財産となるでしょう。

 そしてカープ一筋19年の石原慶幸の入閣には、次代の正捕手を確立させる狙いがあるでしょう。盗塁阻止率をあげるなど、課題解消に向けて期待したいですね。また新井良太が二軍打撃コーチに就任することで、監督の実弟という兄弟ならではの意思疎通、野球観などもありスムーズな連携が取れるのではないでしょうか。一軍だけではなく、二軍も含めた全てが戦力と見ていく中で、監督の要望にあった選手をいつでも出せるようにスタンバイさせておくことが、ファームの最重要事項になるでしょう。

 新井監督は、代々の監督が行なってきた良い部分を継続しながら、チームづくりを進めていくでしょう。1年間を戦い抜くということは、監督業の一番大変なことだと思いますが、シーズンは長丁場ですので、負けを恐れず、思い切った采配を期待したいです。一流の監督はよく“遊び心が大切”と言います。新井監督には、本来の真面目な部分と、周りに愛される天性の人間性と、心の余裕も出しながら頑張ってもらいたいです。1年が長く感じ、苦しい時期も必ず訪れると思いますが、新井監督の精神力であれば、きっと乗り越えてくれると信じています。

広島アスリートマガジン12月号は、『恩師と選手が語る新指揮官の魅力』を特集。 新井貴浩監督の話をしよう。月刊誌でしか見ることのできないビジュアルも満載です!