◆シーズン後は身も心もボロボロだった

 僕はこのCSファイナルステージ、まったくの平常心で臨んでいた。チームは阪神に連勝して、この4年間で最高の状態に仕上がっていた。だから何か秘策を練ることも考えなかったし、終わってみても、「ああしておけばよかった」「こうしておけばよかった」と後悔することもない。勢いのまま進み、選手を信じ抜いたシーズンだったということだ。

 だが、その最高のチーム状態でも巨人の壁は越えられなかった。僕たちは勢い込んでぶつかったが、それを止めるほど巨人の壁は高かった。

 それを受けて僕は2014年「巨人を徹底マークする」という方針を掲げるようになる。それまでは口に出さなかったが、2014年ははっきりと巨人を意識させ、巨人への苦手意識を拭い去ることを目標に据える。

 これまでも「中日への苦手意識」や「秋以降の失速」など数々の悪癖を克服してきたチームだが、いよいよ「巨人へのコンプレックス」を乗り越えない限りこれより先に行けないように思ったのだ。

 初めてづくしが続いた激動の2013年が終わった。シーズン終了後はとにかく体調が厳しかった。あの時期いろいろと噂されたが、疲労やストレスが蓄積されて、僕は身も心も心底ボロボロの状態になっていた。

 体調の厳しさというのは、主にメンタル面のことである。選手、コーチとの接し方、ベテランでも二軍に落とすという決断……僕は監督という仕事を行う中で、上に立つ者のつらさを身に沁みて感じていた。

 監督をやっていてもっとも苦しかったのは、選手を二軍に落とさなければいけないことだ。それに比べたらメディアに叩かれたり、ファンからヤジを浴びることくらいなんでもない。それは自分が背負えばどうにでもなるからだ。

 だが監督はどんなに頑張っている選手でも二軍に落とさなければならないときがある。彼らに家族も子どももいることも知っている。自分も選手時代を思い出すと、使ってくれない監督は嫌われるということはわかっていたので、彼らの苦しさや怒り、やり切れない気持ちは肌に刺さるように感じられた。