◆若手とベテランでは接し方を変えていた

 それは2014年シーズンに臨むにあたり、僕が一番期待していたことでもあった。僕も選手時代、しびれる戦いを経験することで成長してきた。高いレベルで争うことで多くのものが得られるし、それは選手の顔つきやプレーにも表れる。

 その中で僕の仕事は「期待されている中で、どう期待通りに勝つか」ということへ次第に変化していった。できないものをできるようにするのではなく、勝って当たり前という雰囲気の中でいかに当然のように勝ち切るか―そういうところに少しずつシフトしてきたシーズンだった。

 開幕前のチームは明るいムードに包まれていた。前年の躍進もあったし、ただでさえ若いチームにドラフトで才能のある若手が加わった。さらに大竹と入れ替わりに人的補償で一岡(竜司)が巨人からやってきた……次世代を担う若い選手があふれ、23年ぶりの優勝に向けての期待感は十分すぎるほど膨らんでいた。

 これまで僕は若手のことについて多くのことを語ってきた。ではベテランに対してはどう接してきたのか? ここではそのことについて触れたいと思う。まず僕は若手とベテラン、それぞれで接し方を変えていた。

 選手は誰しも若手の頃があってベテランになる。ならばベテラン選手はそれだけの経験値を持っていないとマズイだろう。彼らは若手選手を10とするならば、100や1000という数の打撃機会や守備機会をこなしてきたのだ。そういう選手に今さら「どうしてこれができないの?」とは僕には言えない。それは彼らに失格の烙印を押すことになるからだ。

 同じようなことは会社組織でも言えるのではないだろうか。入社20年目の40代の社員に、「なんでそういうミスをするの?」とはなかなか言えない。そういうときに思うのは「配置換えをしないといけないな」ということだ。自分の立場というものはベテランではなくても肌で感じるものだ。逆に指摘されて気づくようでは遅い。

 もしそこで「このままだとマズい」と感じるようなら、その人は即座に解決策を探した方がいい。それは「1時間でも早く出社して仕事を見つけよう」となるのか、「居残って勉強をしよう」となるのか、「新しい自分を探そう」と思うのか、それは人それぞれだ。自分に合ったやり方で逆境を突破していくしかない。