昨シーズン、23年間の現役生活を終えた1人のサッカー選手がスパイクを脱いだ。

 2000年からサンフレッチェ広島で活躍し、日本代表としてW杯にも出場したDF・駒野友一だ。J1、J2、J3、JFLとすべてのカテゴリーを経験したベテランは、今シーズンから指導者として新たなキャリアをスタートさせる。

 今回は、駒野コーチと親交の深いOB・吉田安孝氏がインタビュアーとなり、広島復帰を決めた裏側から、コーチとしてのビジョンまでを対談形式でお届けする。

広島時代の駒野友一。主に右サイドを主戦場とし、正確無比なクロスはストライカーのゴールを量産した。

広島はサッカー選手としての原点。子どもたちの成長が喜びに

吉田「引退を決意して、他のクラブからも指導者としてのオファーはあったと思うんだけど、そんな中でも広島を選んだ最大の理由は何だった?」

駒野「広島は、僕がここからサッカー選手としてスタートした地でもあり、ユース3年間を過ごした場所ということもあって、やっぱり、一番思い入れのあるクラブでしたね。最終的にはサンフレッチェに戻りたいという思いは、僕の中にはずっとありました」

吉田「自分で思い描いていた夢を、こうして実現していっているという感じだね」

駒野「そうですね。どちらかというと、実現“させてもらっている”という感じです」

吉田「コマは、『ジュニアを育成したい』というコメントもしていたけど、そこにはどんな意図があったのかな」

駒野「僕の子どもが今小学5年生なんですが、うれしいことに、子どもが所属しているスポーツ少年団でサッカーの指導をさせてもらう機会もありました。その時に、自分の言葉を子どもたちがしっかりと聞いてくれて、練習の中で実行してくれる。2、3時間という時間の中でも、子どもたちの成長を感じられることがうれしくなってきたんです。以前であればそんな気持ちにはならなかったのかもしれませんが、年齢を重ねたことで、教えた時の成長がうれしく感じられるようになってきて。そういう気持ちがあって、まずは成長過程にある子どもたちに指導したいと思いました」