2016〜2018年のリーグ三連覇を成し遂げたカープ。その勝因の一つに、選手層の厚みがある。二軍で鍛錬を続ける若手が一軍選手のレギュラーの座を脅かす。

 そんな好循環を築き上げた連覇当時の二・三軍首脳陣インタビューから、伸びる選手の条件若手の育成方法を紐解いていく。今回は2017年当時の水本勝己二軍監督(現オリックスコーチ)の育成論を振り返る。(2017年7月号 広島アスリートマガジンより)

ルーキー時代の坂倉将吾。考える力、継続力は他の選手よりも頭ひとつ抜けていた。

カープ二軍が大切にする“やり抜く力”

 やはり自分自身から能動的に動き、そしてそれを継続してやっていく力を持っている選手が伸びているように思います。二軍ですから、どうしても首脳陣から練習を課される部分はありますが、そこにプラスαとして自分なりの練習をいかに組み込めるかという事が大切だと思います。

 私は選手たちとのミーティングの中で『やり抜く』という言葉を使うのですが、これは少しでも選手自身が考えた練習を行い、そしてそれを一度だけではなく、何度も何度も繰り返してほしいという思いから使っています。

 たとえば由宇で試合を行ったとすれば、選手たちは間違いなく疲れが溜まっているはずです。ですが、そこで自分のためだと考え、大野練習場に帰ってから自主練習を行うかどうかという事です。

 そしてそれは1日やったからといって劇的に野球がうまくなるわけではありません。毎日の積み重ねは少しずつかもしれませんが、必ずその努力が結果として表れる時がくると思いますし、そういう事をしている選手の方が一軍に上がる確率が高いのです。

 二軍でさまざまな選手を見てきましたが、新井貴浩、石原慶幸、鈴木誠也も今一軍で活躍している選手(2017年当時)は共通して自分で考えた練習を行っていました。

 最近の選手で驚かされたのはルーキーの坂倉将吾です。ミスもたくさんしているかもしれませんが、自分で考え、いろいろな事を継続して行う力は間違いなく持っています。

◆コミュニケーションをとり、自らも多様な方法を学び続ける

 私は選手として実績を残したわけではありませんから、指導のための勉強を欠かしてはいけないと思っています。またさまざまなタイプの選手がいますから、まずコミュニケーションを取りながら、選手たちに合った最適な指導をしていきたいです。

 

●水本勝己/みずもとかつみ

 1968年10月1日生、岡山県出身。89年ドラフト外でカープに入団後91年限りで現役を引退。その後はブルペン捕手としてチームに残り、07年途中にブルペンコーチ補佐に就任。11年に三軍統括コーチ、13年から二軍バッテリーコーチを務める。16年から二軍監督を務め、2017年には二軍初のファーム日本一へと導いた。

広島アスリートマガジン2月号は、本誌初登場!秋山翔吾 2023年の覚悟』。さまざまな角度から秋山選手の“覚悟”に迫りました。2015年以来の登場となる、前田健太選手インタビューにもご注目ください!