その左足から繰り出されるコーナーキック。相手GKに襲いかかる、強烈なミドルシュート。レジェンドの引退セレモニーで決めたゴールでは、高く掲げた11のハンドサインがエディオンスタジアムに集まった多くのサポーターの胸を打った。

 広島を愛し、広島のために力を蓄え、広島のために戻ってきた背番号『7』。

 今や広島に欠かせない“心臓”となった野津田岳人が、新シーズンへの思いを語る。

スキッベ監督のもと、昨季ボランチとして台頭。チームの中心として活躍した野津田岳人。

ートルコでの1次キャンプ、宮崎での2次キャンプを終えて、ここまでの手応えはいかがですか? かなりハードなキャンプだったと伺いました。

「そうですね。すごくタフなキャンプでした。練習もハードでしたし、スケジュール的にも試合が多いなか、みんなでこなせたというのはすごく良かったと思います。コンディションが上がったという感覚をトルコでつかむことができたので、それも大きかったと感じています。海外チームを相手にたくさん試合もでき、その点でもすごく良い経験になりました。いろいろな課題や収穫の見つかったキャンプでした」

ー具体的には、どのような収穫がありましたか。

「体の強い外国人相手であったり、強度の高い相手に対しても、自分たちが良いかたちでボールを回すことができれば通用するんだという手応えを感じられたことです。プレスの部分でも、全員で『前からボールを奪いに行くんだ』と意思統一できた場面では相手からボールを奪うことができていました。『自分たちがこういうサッカーをすれば通用するんだ』と感じることができたのは、キャンプを通しての収穫だったと思います。自分たちの良さを出せば、海外チームが相手でも通用するんだというところには手応えを感じましたし、普段チームがやっているシステムとは違うシステムにも取り組んだのですが、そこに対する手応えもすごくありました」

ーシステムの部分についてお伺いします。トルコ1次キャンプではシーズン中の3バックではなく、4バックに取り組んでいました。戸惑いなどはありませんでしたか?

「最初のうちは、みんなもすごく戸惑っていました。自分自身も、ポジショニングの部分などいろいろなところで戸惑いはあったのですが、試合を重ねるごとにチームとしての戦い方も慣れてきたので、楽しかったという感覚もありました。4バックというシステムに対する手応えも感じるなかでトルコキャンプを終えることができたので、そういう意味でも、新しいことをして、実際に手応えをつかんで帰れたのは大きな収穫だったと思います。ケガなく終えることができたということも含めて、充実した1次キャンプだったと思います」

ー課題としては、どのような点が挙げられますか?

「課題は、これもシステムのところですが、細かい部分で『頭では理解していても、体がスムーズに対応できていない』ところがありました。そのあたりのズレから相手に突破されてしまうシーンや、うまく攻撃につなげることができないシーンもあったので、その点はすごく課題だと感じました。個人的には、ボールの受け方や前にボールを運んで行く時の体の向き、パスの出し方などが昨年のシーズン中に比べるとまだまだ上がってきていないと感じる瞬間がありました。技術的なところのズレもあったので、そのあたりも今の課題だと感じています。宮崎の2次キャンプは、そういったズレを修正していくイメージで入りましたが、だいぶ上がってきた感覚はあります。トルコキャンプでは周りが見えていなかった部分もあったのですが、少しずつ視野の部分も戻ってきたと感じているので、フィジカル面と技術面の両方でコンディションが上がってきたのではないかと感じています」

ーちょうど1年前、広島復帰直後にもインタビューをさせていただきました。その時に、『ここで結果を残さないと、もう広島でプレーする機会はないかもしれない。そんな吹っ切れた気持ちで臨んでいる』とお話しされていたのが印象的でした。そうした強い思いで臨んだ昨シーズンは、野津田選手にとってどのような1年だったでしょうか。

「昨シーズンは本当にラストチャンスというか、『ここで結果を残せなければ』という気持ちで始まった1年でした。実際開幕ではベンチ外だったので、気持ちとしても難しい部分がありました。ただ、自分自身は前向きにプレーし続けることができましたし、結果的にポジションをつかむこともできました。チームも良い戦いをすることができ、こうやってここでまたプレーできているということも含めて、自分にとってはすごく充実した1年間だったと思います」

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