B1リーグに進出して3年目を迎えた広島ドラゴンフライズ。一度はドン底を味わい、そこから少しずつ上位リーグで通用するチームづくりを行なってきたカイル・ミリングヘッドコーチ。彼が大切にする、チームづくりの哲学を語ってもらった。

ペンを片手に指示を出すカイル・ミリングヘッドコーチ。選手の細かな仕草を見て、状態を見極めることも仕事の一つ。

◆チームづくりで最も重要なのはコミュニケーション

―目標を掲げ、理解を深めるというチームつりの上で、ミリングヘッドコーチが大切にしていることは、どんなことでしょうか。

 「一番重要なのは、コミュニケーションをしっかりと取ること。選手同士、スタッフ、チームに関わるすべての人達との細かいコミュニケーションを、綿密に取り続けることが大切だと考えています。そこから改善点を見つけることができたり、チームの状態、個々の状態が把握でき、コンディションが悪い時にも前向きに進んでいくための、ちょっとしたきっかけに気づくことさえできます。それが私のコーチングにおいて、最も大切にしている部分です。ですから、選手達にも繰り返し、コミュニケーションを取ることが大切だと話しています。すごく人と話す選手もいますし、逆に話すことが苦手な選手も当然います。そういった時には、選手同士でフォローをし合うことで、そこにコミュニケーションが生まれると、みんなに伝えています」

―技術を教えるというよりも、コミュニケーションに重点を置いたチームづくりをされているんでしょうか。

 「バスケットボールはメンタルのスポーツだと考えています。試合を決める重要な要素は、80%がメンタル、残りの20%がテクニックと言われています。安定したメンタルを保ち、それをフォローするためには、チーム内のコミュニケーションが重要です。メンタルの状態が良ければ、それが結果につながり、スキルの向上にもつながると考えています。B1リーグの24チームそれぞれが、全て違ったシステムやチームづくりで勝ち進んでいけるようなレベルではありません。成熟されたシステム、戦術を用いて試合に臨むチームの中で、トップ3に入るチームは、すごく良いメンタルを持っていますし、コミュニケーション能力がとても高いのです。そう考えると、勝敗の分かれ目は、やはりメンタルの部分に現れるのです。私の肩書きは『ヘッドコーチ』ですが、マネージャーという仕事もしているのかなと感じています。選手一人ひとりの状態や、精神的な部分をしっかりと見て、今日はどうやって選手、チームをマネジメントしようかと考えます。ちょっとした表情や仕草から、選手の状態を推察したり、心理学者的な目線から、どうしたら彼らの能力をより引き出せるのかということを、いつも気にかけています。技術や戦術を教えるヘッドコーチというよりも、いろいろな選手をマネジメントするマネージャーという役割や視点から、チームをつくっているのかなと感じています」

◆カイル・ミリング
1974年7月27日生、アメリカ出身。1998年からの2シーズンは日本(日立大阪ヘリオス)で選手としてプレー。2011年に選手を引退し、教員としてカリフォルニア州の高校でバスケットボールの指導を行う。2013年からはフランスリーグでアシスタントコーチを務め、2015年に横浜ビー・コルセアーズのヘッドコーチに就任。2021年からは広島ドラゴンフライズでヘッドコーチとして指揮を執っている。

広島アスリートマガジン4月号は、いよいよ始動した新井新監督が表紙を飾ります!広島ドラゴンフライズ カイル・ミリングヘッドコーチなど、広島のスポーツチームを率いる監督たちの哲学にも迫りました!