リーグ戦、カップ戦ともに好調を維持しているサンフレッチェ広島。劇的な逆転勝利あり、大量得点での快勝ありと、今シーズンもファン・サポーターを楽しませてくれている。

 今回は4月上旬までの戦いを振り返りながら、サンフレッチェ広島OB・吉田安孝氏に、注目選手を熱く語ってもらった。

(データは全て4月6日の取材時点)

G大阪戦で決勝点をあげた満田誠。アウェイのスタジアムに、エースのチャントが響いた。

初勝利につながるPKを成功させ、エースのチャントを引き継いだ11番

 リーグ戦初勝利となったG大阪戦では、アディショナルタイムに得たPKを満田誠が決めて、決勝点をつかみ取りました。

 あの瞬間は誰もが天皇杯を思い浮かべたでしょうし、本人にもその思いはあったのではないかと思います。そこできっちりと決め切ってチームの初勝利を手繰り寄せたこと、そしてサポーターから、久保竜彦、佐藤寿人といった歴代エースに受け継がれるチャント(応援歌)を贈られたこと……。本人にとっても、忘れられない1戦になったのではないでしょうか。

 またこの試合後には、円陣でスキッベ監督からの印象的な言葉もありましたね。途中投入してすぐに交代をさせた松本泰志について、自らの采配ミスだと認め、謝罪の言葉を口にしました。全員がいる前での指揮官からのこのようなフィードバックは、なかなかできることではありません。こうしたことの積み重ねが、チームの信頼関係をより強くしているのだろうと感じられるワンシーンでした。

 そして、満田と同じく活躍が光っていた選手が、東俊希です。

 彼もここまで複数のポジションで起用されており、柏戦ではボランチでスタメン出場していました。東は昨シーズン、初めてボランチに起用されましたが(2022年4月10日、福岡戦)、今シーズンもここまではボランチとして重点的に練習してはいなかったと記憶しています。そうしたポジションで起用されても淡々と役割をこなすことができ、ゴールにも絡んでいく。これは東の技術、フィジカル、キックの精度など、あらゆる面における能力が高いことを証明していると思います。

 今季加入の志知孝明、ケガから復帰した鮎川峻にも注目してみましょう。

 志知は徐々にチームにも馴染んできて、彼本来の、サイドのスペシャリストたるプレーを見せてくれています。ボールの持ち方やクロスの質が非常に良いのが彼の特徴の一つです。ストライカーからすれば最も受けやすいクロスを供給できる志知の活躍には、今後もますます期待したいと思います。

 そして、昨シーズンはケガに苦しんだ鮎川が出場機会を増やしてきていることも、ファン・サポーターからするとうれしいですね。今シーズンはここまで1トップやシャドーでプレーしていますが、彼の魅力はあのスピードや、裏へ抜け出す動きにあります。本人もFWとして、ストライカーとして、とにかく早くゴールをあげたいという思いがあるでしょう。

 ナッシム・ベンカリファ、ドウグラス・ヴィエイラ、ピエロス・ソティリウらがいるFWのポジションはチームの中でも激戦区ですが、サンフレッチェの日本人ストライカーとして、これからの活躍には大いに期待をしたいと思います。

広島アスリートマガジン5月号は、「まだ見たい!もっと見たい!」勝利を知る経験者たちの魅力をお届け!カープ3連覇を支えた投打の主力たちの現在地に迫ります。