開幕4連敗と不安なスタートとなった新井カープ。その後は盛り返して一時首位に立つなど、今後に期待を持てる戦いを展開する。その中で、3連覇を牽引したベテラン選手の活躍もあった。ここでは、OB・笘篠賢治氏に、現在のカープのショートについて語ってもらった。

田中広輔と小園海斗の激しいショートのレギュラー争いが、相乗効果を生んでいる。

◆好調さは、守備面からも感じ取れる

 今季プロ10年目の節目を迎える田中広輔は、4月9日の巨人戦で約2年ぶりとなる本塁打を放つと、4月16日のヤクルト戦では逆転劇につながる満塁ホームランを放ちました。3連覇を経験し、その後苦労を重ねた選手の勝負強さと今季に懸ける強い思いを感じさせる一発でしたね。

 田中の好調さは1つひとつのプレーを見ていても感じ取ることができます。まず守備面では足の捌き方を見るとしっかりと下半身の踏ん張りが効いており、側から見ても状態の良さが分かります。そして、打撃面でもバッティングのポイントをきちんと体の前で捌くことができ、インコースの球もしっかりと体に呼び込み、一、二塁間やライト方向に引っ張れています。

 戦術として、カウントが追い込まれた際などは、ポイントを下げての打撃でも良いのですが、基本的には体の前で捌きができなければ、苦しい打撃になってしまうのです。

 田中自身、ここ数年は思うような打撃ができていなかったように感じますが、今シーズンは田中の魅力であるこの打撃を良い状態でキープしながら頑張ってもらいたいですね。

◆ショートのレギュラー争い

 田中が活躍することで、ショートのレギュラー争いが激化していきます。昨年127試合に出場した小園海斗もさらに気合いが入ることでしょう。彼の場合はセンスもありますし、高校時代から国際大会なども経験している選手なので、人よりも自信があるでしょう。ただ、まだまだレギュラーとして確立しているわけではありません。褒めて伸ばしながらも、厳しさを伝え、カープを支える選手に育っていってほしいものです。

 あくまで小園の役割は、“出塁してなんぼ”であり、簡単に打ち上げてしまってはいけない選手です。今はバットの軌道が、球を押さえ込む前に上げようとしているように見えます。叩いていくようなイメージで、まずは球をとらえて、上げていく。まさに同じ左打者として、現在打撃絶好調の秋山翔吾という“生きた見本”がいるので、彼を参考にしたら良いのではないかと思います。

 私は、小園を見ていると、現役時代の木村拓也(元カープ)に似ていると感じます。性格もまさにそうで、調子が良いときはその波にしっかりと乗ることができるのですが、調子を崩してしまうと、切り替えが苦手な部分がありました。「お前に任せた」と言われるまでにはもう少し時間がかかるかもしれませんが、きちんとこの壁を乗り越えれば、小園は内野のキャプテン的存在になれるはずです。

 今はスタメンでないからといって焦る必要はありません。田中の疲れが溜まってくるなど、必ずチャンスは巡ってくるので、しっかりと日々の練習や、試合前の打撃練習などでアピールし、モチベーションを上げながら続けていれば、新井監督はちゃんと見てくれているでしょう。

 監督が開幕前に口にしたように“好き嫌い”ではなく、状態を見てスタメンを決めているように私は感じています。何事も優先順位を間違えてしまうと、選手のモチベーションは下がっていきますが、新井監督はそこがきちんとわかってあげられているので、小園もモチベーションを保ちつつ、挽回する機会を待てるはずです。今後の活躍にも期待しましょう。

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