2016年〜2018年のカープ3連覇当時、田中広輔、菊池涼介、丸佳浩(現巨人)の1989年世代の「タナキクマル トリオ」が上位打線を形成し、チームを牽引していた。
あれから数年が経過し、当時のカープを支えた“89世代”もそれぞれ立場が変わっている。ここでは『タナキクマル トリオ』と共に活躍してきたカープOBの安部友裕氏に同学年の選手について語ってもらった。
◆多くの刺激を受けた同世代。意識し切磋琢磨した日々
僕は1989年生まれですが、他球団でのドラフト同期には、中田翔(巨人)、唐川侑己(ロッテ)、佐藤由規(元ヤクルトなど)がビッグ3と呼ばれていました。カープの同期では、丸佳浩(現巨人)がいて、ポジションは違えど同じ野手ということで、すごく意識していました。
ここ数年の若手選手たちは、とても仲が良いと感じますが、僕が入団した当時の同学年同士、特に野手同士の丸とはお互いを意識するあまり、少しよそよそしい雰囲気が正直ありました。僕自身、若い頃はライバル心をむき出しにするタイプでしたので、そのような感じになったのかもしれません(苦笑)。
ですが、年数を重ねていくうちにそういう感覚も変わっていきましたし、それこそリーグ3連覇をしていた頃はお互い本当に高め合える存在でした。
2023年シーズン、現在カープに残っている同学年の選手はキク(菊池涼介)、(田中)広輔、(野村)祐輔の3人になりました。彼らとは主力として3連覇を共に経験しましたが、やはりあの経験をしている、していないとでは大きな違いがあると思います。
あの3連覇から数年経ち、個人個人を取り巻く状況は違いますが、それぞれ試合に出場する楽しみや苦しみを知っていますし、それは経験した選手にしか伝えることができないことだと思います。そう考えると30代中盤を迎える彼らが若手の多いチームのなかで、どういう立ち居振る舞いをするかが、より大事になってくるのではないでしょうか。
例えば、昨年まで連覇を果たしているヤクルトを見ていると、野手には青木宣親選手、投手には石川雅規投手というベテラン選手がいます。実績があるベテラン選手がいることで、やはりチームは引き締まるものです。また、青木さんは一番先頭にたち声を出されていますし、試合に出ればハッスルプレーを展開されています。
そういう姿こそがチームの士気を上げる行動だと思いますし、良い影響をもたらすと思います。そういう環境の中で、若い村上宗隆選手がノビノビとプレーし、中堅では中村悠平選手がしっかりとプレーしています。
やはり強い組織はそのような形が大事だと思います。3連覇をしていたカープもまさに、プレーで後輩を鼓舞してくれる新井貴浩さん(現カープ監督)、黒田博樹さんがおられました。
僕と同じ“89世代”のキク、広輔、祐輔はまだまだ老け込む年齢ではありませんし、チーム力を上げる意味でも、もう一度存在感を見せてほしいと思っています。