2022年ドラフトでは、カープは1位 斉藤優汰(苫小牧中央高)、2位で同じく高校生の 内田湘大(利根商高)、3位で即戦力投手として期待する益田健尚(東京ガス)。育成2位では先日、支配下登録を勝ち取りいきなり一軍出場を果たし、将来の大砲として期待される中村貴浩(九州産業大)を獲得した。2021年ドラフト6位で指名した、長距離打者・末包昇大は身長188センチ、体重110キロという巨漢。鞘師智也スカウトは「社会人屈指の右のスラッガー。守備力、走塁力もある動ける大砲」と評価している。

 カープ過去ドラフト6位の大砲で思い出されるのが、広島出身の大砲・新井貴浩だろう。アマ時代は無名の存在ながらも、猛練習に耐えてレギュラーポジションをつかみ、球界を代表するスラッガーへと変貌を遂げた。結果的に通算2000安打を達成し、リーグ3連覇に大きく貢献した。

 長年カープスカウトとして活躍した故・備前喜夫氏が本誌に語ってくれた、新井6位指名の経緯をお送りしよう(2021年の掲載記事を再編集)。

ドラフト6位入団ながらも、球界を代表する打者となった新井貴浩。

◆スカウトの評価は高くなかった

 彼のことは広島工高時代から「遠くへ飛ばす力のある打者」ということで聞いていました。実際に見てみると、確かに良いものは持っていました。ただその大きな打球が出るのが、確率にしてみたらものすごく低く、高校ではレフトを守ってましたが、外野守備はドラフトで指名するレベルではありませんでした。

 成功するのは並大抵の努力ではダメだろうと思って、大学で4年間鍛えてもらって変わってくればということで(指名を)見送ったんです。

 しかし(1998年)ドラフト直前もスカウトの評価は決して高くありませんでした。高校時代からの「飛ばすけど粗い」「守備のレベルが低い」という課題はあまり克服されていなかったのです。

 守備面が一番の問題でした。「どこを守らせればいいんだろうか」というのが正直な所だったんです。大学では監督さんが彼の打撃をなんとか生かそうと思って、ファーストの他レフト、サードも守らせたようですが。

 我々スカウトから見たら、「サードだと189センチと長身ゆえに上体があるのでプロではとても使えんだろう。かといってファーストにしておくほどの打撃ではないし、外野ならどうかなぁ」と非常に悩まされる選手でした。

 正直言うと、(指名を)見送ろうというところまでいってたんです。しかし会議直前になって「一発長打という魅力を中心に考えれば、とても面白い選手なんじゃないか」という意見が強くなって、「じゃあその一発長打を期待して」ということで指名することになりました。

 素質も当然大事ですが、指名されてプロに入るかどうか悩む選手より、「指名されたら絶対頑張る」という選手の方が伸びてくれると思いますよね。まさに新井はそんな選手でした。新井の第一印象は「大きいなぁ」でした。それで「これだけ大きけりゃたくさん食べるだろう。その食べる分くらいは稼いでくれよ」と話をしたのを覚えてますよ。