正念場となる9月に入って6連敗を喫するなど、苦しい戦いが続いた新井カープ。その状況下においても“ポジティブ”に戦いに挑み続ける新井監督は、積極的な若手起用を試みている。ここではOBの笘篠賢治氏に注目の若手選手について語ってもらった。

8月27日、29日、30日と3試合連続でホームランを放った末包昇大選手。

◆3試合連続本塁打。存在感を魅せた、末包昇大のバッティング

 夏場の戦いのなかで秋山翔吾や西川龍馬など主力の故障離脱も響きましたが、その穴を埋めるべく若手選手の奮闘も光っていました。特に8月は末包昇大が存在感を見せていました。

 8月27日のヤクルト戦から3試合連続本塁打と持ち味の長打力を発揮しました。今季は開幕二軍スタートでしたが、6月13日に一軍昇格すると、夏場からスタメンでの出場機会も増えて54試合で8本塁打。彼が打席に入れば「何かやってくれるんじゃないか」という雰囲気を感じます。 

 末包は打撃の引っ張りはもちろん、右方向へも大きな一発が打てる選手です。自主トレを共に行った鈴木誠也(カブス)を彷彿とさせるような打撃フォームですが、彼に一歩一歩近づいているのではないかと感じる部分もありました。

 春季キャンプを訪れた際、1年目と比べて打撃フォームが少し変化していたように感じました。彼の中でその変化を1年間継続できているのではないかと感じます。これまでは力を入れ、強く振り、遠くに飛ばそうという意識が強かったのか、体の開きが早くなっているように思えました。現在は見た目こそ変化はなくとも、インパクトの瞬間だけに力を入れることができているように感じます。

 8月30日に巨人・菅野智之投手から放った一発は、コンパクトにミートし、ライトスタンドへのホームランとなりました。末包ほどのパワーがあれば、目一杯のスイングでなくとも球は飛んでいきます。コンパクトに芯でとらえる感覚をつかんでいけば、さらに良い結果が伴ってくるのではないでしょうか。

 そして、回転の多いスライダーも拾えるようになってきています。8月31日に巨人・菊地大稀投手からスライダーを続けられながらも粘りを見せ、9球目の外角低めを技ありのヒットとしていました。これは左の壁をつくれるようになり、我慢できるようになった証拠です。このような姿を見ると、末包の成長を感じます。

 末包が言っていましたが、主力離脱からつかんだチャンスです。これからレギュラーに定着していくには、ただ来た球を打つというシンプルな打撃だけではなく、追い込まれるまでは思い切って山を張るなど、結果を残せるようにならなければなりません。さまざまな投手と対戦を重ねることで、配球の予測など体に染み付いてくるはずです。スタメンで出た場合は打席数も多くなり、捕手との駆け引きも覚えてくるでしょう。1打席1打席を成長につなげて、引き続きペナントレース、そして次のステージでの活躍を期待したいです。