アイスホッケーチーム・H.C.日光アイスバックス傘下の女子ジュニア出身選手を中心に中学生から社会人までと幅広い年齢層で活動する「日光アイスバックスレディース」。自身もアイスバックスで現役時代を過ごし、現在は古巣で後進育成にあたる衣笠伸正監督。ここでは、衣笠監督が女子アイスホッケーの未来に見るものとは何かを聞いた。

第12回軽井沢レディースアイスホッケー大会で優勝した日光アイスバックスレディース

◆楽しんでもらうことを1番意識しています。

――9月30日、10月1日に行われた第12回軽井沢レディースアイスホッケー大会(以下、軽井沢レディース)では見事優勝を果たされました。

 「軽井沢レディースの位置付けとしては、シーズンインとなる大会なので新人戦に近い感覚の大会となります。これからチームとして仕上げていくチームが多いですが、その中でも2年連続の決勝進出、今年は優勝ができたということは非常に大きいと思っています。また、この大会では日光アイスバックスレディースよりランクの高いチームとも戦い、格上のチームに勝ち切れたのは大きな収穫となりました」

 

――今後、日光アイスバックスレディースとして照準を合わせている大会があるのでしょうか。

「一番は年に1回ある全日本女子アイスホッケー選手権です。予選が2試合ありそこを勝ち抜くと本大会に出場することができます。またそこまでの過程でも、大体年間で50試合程度日程を消化します。それぞれの試合に目的を持って臨んでいくことで、子どもたちには良い学びを提供したいと考えています」

――女子育成年代ならではの難しさなどはありますか?

「男女問わずですが、多感な時期になるので育成年代のコーチングというのはどの競技でも難しいものがあると思います。特に女子アイスホッケーの場合は、現実的に大学やその先につながるケースが今はまだ少ないので、モチベーションの持っていき方など、難しい部分があります」

――指導にあたり、特に意識されている点はありますか?

「プロになるという選択肢が稀有な世界です。その中でプレーをしている子たちは何よりも“アイスホッケーが好き”という動機でいてくれるので、楽しんでもらうことを一番意識をしています。その中でただ楽しいだけでなく、団体競技特有の協調性やコミュニケーションの取り方などは社会に出ていく上でも必要なことなので、競技を通して身につけてもらえればと思っています」

 

――ご自身がアイスバックスでプレーをしていた時のジュニア年代の取り組みにはどんなものがありましたか?

「当時はまずトップチームを成立させるというフェーズだったので、後進育成などの発想はない時代でした。そこから地域貢献活動を含めて応援してくれる方々への還元ができ、将来のアイスバックスを支えてくれる可能性のある選手を育成できる環境ができたことは非常に大きいと思っています」

――衣笠監督は以前から育成・コーチングに興味があったのでしょうか?

「そうですね。私自身が引退したきっかけも指導者になるためでした。埼玉栄高出身なのですが、当時のコーチが退任されるということで声をかけてもらい指導者になりました。埼玉栄高での指導期間を終えて、アイスバックスに戻ってきた際に、この経験を積んできたことも活かされコーチを務めることになりました」

――指導を始めた当時から現在までを振り返り、変化を感じた部分はありますか?

「さまざまな変化があると思いますが、一番は環境です。私の高校時代はアイスホッケーができるアイスリンクは少なく、なかなか環境が整わないことが多かったです。ただ、今は各都道府県にアイスリンクがあり、少しずつではありますが環境が整ってきていると思います。一方で女子選手に限って言うと人口はなかなか増えておらず、大体競技人口は2,500名程度と言われています。次の課題としてはこの競技人口増加が挙げられると感じています」

――最後に今後のアイスバックスの育成年代、アイスホッケー界の育成としての展望を聞かせてください。

「まずは試合に出て勝つこと、練習の成果を出す楽しさを実感できることが必要だと考えているので、その点は引き続き行いたいと思っています。なかでも私が創設から携わっている、『女子アイスホッケー交流戦』という大会は継続して行う意義があると考えています。リーグ戦形式で試合数を行うことで選手のモチベーションにつながりますし、試合を見たり友達が出ていたり、何かのきっかけで初めてアイスホッケーに触れる人も増えてくれたら競技人口の増加にもつながると思いますので、引き続き取り組んでいきたいと思います」

日光アイスバックスレディースの衣笠伸正監督