新井カープ1年目となる昨シーズン、全員野球で5年ぶりのAクラスとなる2位となったカープ。多くの若手選手が躍動するなかで、中堅・ベテラン勢の奮闘も目立った。なかでも、チームに絶対に欠かせない選手の一人だったのが上本崇司だ。

昨季は4番も任された上本崇司選手

「自分でやってしまったケガもありましたし、前半から始まってからなかなか結果が出ていなかったので、正直焦ってはいましたね……。最終的に数字も思わしくなく、点数で言うと……25点ですかね(苦笑)」

 昨シーズンの自身について、そのように謙遜する上本。84試合に出場し、打率.259、64安打、1本塁打、17打点、8盗塁。数字的にはキャリアハイとなった2022年からやや落としているが、84試合中、67試合でスタメン出場。捕手、一塁以外すべてのポジションを守り、ユーティリティープレーヤーとしての存在価値をさらに高めたシーズンとなった。

 また西川龍馬ら4番を打つ選手が不調・故障が重なった時期には、プロ入り初の4番も経験した。

「言われた時は、正直『勘弁してください』っていう感じだったんですけど…。ちょっと僕も4番を打つのは恥ずかしいので……。でもやらないとどうしようもないので……。ただ、難しさとか全くなく、前後がとても良い打者なので、最低限のことをすればどうにかなるかなという感じで、逆に気は楽でしたね」

 4番として12試合に出場し、12安打、3打点をマーク。誰もが驚く新井采配であったが、「つなぎの4番」として、夏場のチームを支え、守りのみならず、攻撃においてもユーティリティー性を発揮した。

 サプライズ采配を振るう新井監督とは現役も共にしている。「なんか変わらなさすぎて逆に心配ではあったんですけど、1年間やってみたらやっぱり選手が打ったら1番にガッツポーズをして喜んでベンチを飛び出しますし、そういう姿というのは大事だなと思いましたね」と語ったように、感じるものがあった。

 新井監督といえば、コミュニケーション能力の高さだ。当然、上本も対話を重ねているが、「監督から『最初はなかなか試合に出れないかもしれないけど、準備を頼むな』という言葉を言っていただきました。良い意味で監督の優しさでもあると感じました。変な意味ではなく、監督に気を遣っていただくのが申し訳ない『僕なんかに気を遣わなくてください』という気持ちがありましたね」と、思いを口にしてくれた。加えて「背中を押されるというか、やってあげたくなります。『やってやろう』という気持ちでしたよね」と、指揮官の姿、言動から気持ちの昂りを持ち、プレーを続けていたことも語ってくれた。

 2024年はプロ12年目・34歳を迎えるシーズンとなる。オフの契約更改ではアップをつかみ取るなど、今やカープに欠かせないプレーヤーとなった。

「個人的な目標は、キャリアハイです。チームで言えば、やっぱり、優勝・日本一です。そこしかないと思います」

 2024年キャンプでは、會澤翼、野間峻祥、松山竜平ら実績ある選手らと日南に残り、開幕に向けて順調な調整を続けている。新井カープ2年目となる2024年シーズンも、背番号0が新井采配に欠かせない選手であることは間違いない。