2023年、全員野球で2位となった新井カープ。若手、中堅、ベテラン選手がそれぞれ持ち味を発揮する中で、存在感を見せた中堅選手の1人がプロ14年目の堂林翔太だ。昨季は2013年以来となる2年連続100試合出場、シーズン終盤では4番を務め、打率.273、12本塁打、35打点をマークした。

今季は選手会長を務める堂林翔太

「最初は開幕4連敗からスタートして、「どうなるかな」というのが正直ありましたが、監督の姿を見ていたら、やっぱりどっしりされた感じだったので、選手も慌てることなく地に足をつけて戦えた結果、すぐに借金も返済しましたし、1年間を通して強くなれたという感じがします。また、優勝チームとは差がありましが、評論家の方の下馬評を考えたらやれたことは多かったんじゃないかなと思います」

 序盤から球宴までチームは快進撃を続けていた一方で、堂林は前半戦終了時、打率.213、4本塁打、12打点。結果が出ず、苦しい日々を送っていた。

「前半はかなり結果も出なくて、2割を切ったりとか、そのぐらいのきつい状態だったんですけど、 オールスター明けたぐらいから徐々に手応えを感じ始めて、1カ月ですけど自分で思うようなことができた回数が多かったのかなと思います」

 球宴明け、夏場から堂林は急激に調子を上げた。好調の理由はロングティーにあった。7月、チーム最年長・松山竜平から「ただ遠くに飛ばすだけではなく、低いライナーでスタンドインさせるぐらいで球を潰すイメージで」という助言を受け、頭と体の感覚が一致したという。

 7月は月間打率.308、7打点。そして8月は月間打率.371、5本塁打、13打点と結果を出した。この時期、カープは西川龍馬、秋山翔吾ら主力が故障により離脱者が続出していた。それだけに堂林はチームの打力低下を補い、守っては一塁を中心に、レフト、ライトと複数ポジションを守れるユーティリティーさも生き、新井カープに欠かせないピースとなった。

 そして何より、新井貴浩監督の存在も好調につながった大きな要素だった。

「僕たちもそうですし、特に若い子たちに常日頃から言われていたのが、「失敗を恐れるな」という言葉でした。それは背中をすごく押してもらえた感じが1年間を通してありました。現役時代を一緒にやらせてもらっているので、あのまま監督になられてる感じで、本当に変化と言ったらあれですけど、“監督だから”っていう、そういう姿もないですし“新井さん”のままで、その姿のままだったので、僕らもやりやすかったというかそういう雰囲気がありました」

 新井監督と現役を共にし、護摩業に同行するなど指揮官の愛弟子でもある堂林。師匠である指揮官からの言葉、声がけは堂林のモチベーションを上げ続けていた。苦しい前半戦となったが、決して腐ることなく試行錯誤を続けた結果、優勝争いの大事な時期である夏場に存在感を示すこととなった。

「僕は最初は試合に出ないところからのスタートだったんですけど、開幕前の神宮のナイター練習の時に、「最初はなかなか試合出れないかもしれないけど、そのあたりは準備を頼むな」っていうのは言われていて。いつ出るかわからないですが、出た時に結果を残してやろうといった気持ちによりなれたこと覚えてます」

 昨季のカープ打線はマクブルームの4番でスタートした。だが、前半戦で結果を残すことができず、7月以降は西川が4番で奮闘を見せるも故障離脱。ここから新井監督は、菊池涼介、上本崇司らを4番に起用するなど打線形成に頭を悩ませた。優勝争いが佳境を迎えた9月上旬には再び西川が離脱。ここで白羽の矢が立ったのが、好調を維持する堂林だった。

 9月12日、神宮でのヤクルト戦で初の4番出場を果たすと2安打を記録。翌日、翌々日には2試合連続本塁打を放つなど、指揮官の期待に応える結果を残した。

「普通通りに別に7番とか6番とかを打っているような気持ちで最初は入りましたね。数を重ねていくうちに、CSでも4番を打たせてもらって、4番の重圧というか、こういう感じなんだなとか、『ずっと4番を打っている人はすごいな』とかを思いながら実践できたので、そういった面では良い経験をさせてもらったと思います」

 優勝こそ阪神に譲ったものの、2位を死守する大事な戦いが続いた終盤、さらにクライマックス・シリーズでも4番として戦い抜き、これまでとは明らかに違う、手応えを感じてシーズンを終えた。そしてシーズン後には、さらなる大役・選手会長を任されることになった。

「(大瀬良)大地に言われたんですけど、「え、俺でいいの?」って言いましたね。「大丈夫か?」って。主将の経験もないんですよ。やったとしても小学校の時なんで、小学校はキャプテンって言っても、ただ背が大きかったらみたいな(笑)。そういうところもあるので……。ただ、なんとかチームを良い方向に向けさせていけたらという思いです。チームとしては、やっぱり優勝・日本一です。選手会長もやらせてもらうことになったのでなんとかして優勝したいなっていう気持ちがあります」

 師匠である新井監督1年目のシーズン、堂林は確実に存在感を見せつけた。プロ15年目・33歳を迎える今シーズンは、選手会長としてチームを引っ張る立場となる。カープファンが期待し続ける背番号7から、今季も目を離せない。