長く愛されてきたカープ坊やはいまや、広島の街の至る場所に馴染んでいる。すっかり広島の街に定着しているのが、マツダ スタジアム周辺に設置されている「カープ坊やマンホール」。ここでは、製作を担当する友鉄工業・鉄蓋事業部シニアマネージャー山下俊哉 さんに、誕生秘話とその思いを聞いた。
◆『 市民権』を得ることができた、“カープ坊やマンホール”の存在
『カープ坊やマンホール』はマツダ スタジアムが開業した2009年に登場しました。
きっかけは旧広島市民球場からマツダ スタジアム移設にあたり、行政が取り組んだ企画でした。マツダ スタジアム周辺は浸水地域と言われ、雨が降ると水が溜まりやすい地域でした。そのため、スタジアムの移設に併せて、浸水対策を行う計画が広島市の考えとしてあり、マンホール設置が必要であったことも関係しています。
デザインは、広島市立大・芸術学部の生徒が考案したものです。スタジアム周辺歩道部にはカラーマンホール、車道部には無着色マンホールが合わせて約200枚以上設置されています。
『デザインマンホール』は、1991年頃に全国で普及しはじめました。当時はどちらかというと市民を巻き込んだものではありませんでした。ですので、『カープ坊やマンホール』ができた時は、プロ野球というカテゴリーが明確化されており、まさに広島の地域活性化、将来に向けたまちづくりに連携しているという観点から、全国的に市民を巻き込んだ『デザインマンホール』の先駆けになったといっても過言ではありません。ですが、設置当初は「カープ坊やを足で踏みつけるとは、どういうことだ」という反対の声もファンのみなさんからはあったようです。
親しみがあるカープ坊やがマンホールになったのは、下水道局の職員の方々や、それに関わる全てのみなさまが、『カープ坊やマンホールの市民権』を得るために、事業に熱意を注いだ結果だと思っています。球場周辺、カープロードに設置されているカープ坊やマンホールをファンの方が撮影している光景もよく見かけるようになりました。制作した私たちとしては非常にありがたい思いがあり、つくりがいを感じています。
2009年以来、デザインは1つでしたが、2016年の優勝を機に種類が増えました。現在マツダ スタジアムには、V7、V8、V9の優勝記念マンホールが設置され、これらのデザインは弊社が担当しました。また、2019年のマツダ スタジアム10周年記念マンホールは、カープロードからマツダ スタジアムへ入るスロープの入口付近に設置されています。