悲願の新スタジアムでの開幕戦を勝利で飾ったサンフレッチェ広島。スキッベ監督のもとで迎える3シーズン目、もちろん目指すは2015年以来の『J1制覇』だ。
ここでは、過去3度のJ1リーグ優勝に大きく貢献した佐藤寿人氏の言葉で、2013年のリーグ連覇を振り返る。残り2試合からの大逆転優勝を収めたこの年、優勝のかかった最終節に臨んだ選手たちの思いを紐解く。(「広島アスリートマガジン」2021年収録記事を再編集)
◆無理だと思ったところから残り2試合での逆転優勝
連覇を目指した2013シーズン。優勝争いがもつれたこの年、僕たちが優勝するためには、最終節で『広島が勝利』し『横浜FMが引き分け、または敗戦』することが条件でした。
その最終節は、鹿島とのアウェイゲーム。言うまでもなく難しい相手ですが、35分に先制できたことが大きかったです。
(髙萩)洋次郎がボールを持ったとき、僕が空けたスペースに(石原)直樹が走り込み、洋次郎からのパスを受けてゴール。うまく前線の3人の連係で崩すことができました。
前半終了間際には、相手の大迫勇也選手(現・神戸)が退場になり、さらに優位に立ちます。
僕は68分に交代で退き、ベンチで見守っていました。80分に直樹が2点目を決めて勝利に大きく近づき、F・マリノスは0-1で負けている。このまま勝てばF・マリノスが引き分けでも、得失点差で僕たちが優勝することになります。
『え? じゃあ優勝じゃん。ええ?』みたいな感じで、みんなフワフワしていましたね。
また、鹿島戦は、この年限りで現役を引退するナカジさん(中島浩司)が控えに入っていて、この日がラストゲームでした。ただ、2-0で試合終了間際になっても、ポイチさん(森保一・当時監督、現・日本代表監督)から声が掛からない。控えのメンバーが、自分のことそっちのけで「ポイチさん、忘れてないよね?」「ナカジさん、もうウォーミングアップはいいから、ポイチさんの横にいて!」とか言っていました。いい意味で、優勝争いの緊張感はなかったように思います。
まさに起こり得ないはずのことが起こった逆転優勝、リーグ連覇でした。サンフレッチェのクラブ規模を考えれば本当にすごいことで、年月が経って振り返っても、やはりそう思いますね。
2012年は一度も連敗がなかった一方、2013年は夏に3連敗。最後の2試合もそうですが、そういうときのリバウンドメンタリティーが2013年の特徴で、苦しい状況でも地道に積み上げてきたものが、最後に花開きました。
(続く)
●プロフィール
佐藤寿人(さとう ひさと)
1982年3月12日生、埼玉県出身。市原(現千葉)ユースから2000年にトップ昇格。C大阪、仙台を経て、2005年にサンフレッチェに移籍。3度のリーグ優勝に貢献し、2012年にはMVPと得点王を獲得した。2017年に名古屋に移籍し2019年からは千葉でプレー。2020年限りで現役を引退。現在は指導者・解説者として活動している。