2022年、着任1年目にしてリーグ3位・天皇杯準優勝・ルヴァン杯ではクラブ初となるカップタイトルを獲得するなど、輝かしい結果を残したミヒャエル・スキッベ監督。クラブ初のドイツ人指揮官は、そのユニークなマネジメント手腕でも注目を集めた。

 今季、3年目を迎えた名将が、選手とチームをより魅力的にしていくために大切にしている考え方とは。ここでは、マネジメント論に迫った過去インタビューをお届けする。(「広島アスリートマガジン」2023年4月号から再編集して掲載)

試合後の円陣で、選手に囲まれ笑顔を見せるスキッベ監督。

どんな時でも情熱を持ちながら、『楽しむこと』こそ最大のポイント

ー2023年は日本で指揮を執る2年目のシーズンになりますが、初めて日本のクラブを率いて戦った昨シーズンを振り返っていかがですか?

「昨シーズンは非常にエキサイティングな、素晴らしいシーズンになったと思います。私が合流する以前から、サンフレッチェには戦術的、技術的に育成された選手たちがそろっていました。Jリーグの他のクラブを見渡した最初の印象も、どのチームにも非常に良い選手がそろっていると感じましたし、大きな力の差はないとも感じました。J1のカテゴリーではもちろん、J1とJ2という異なるカテゴリーを比較しても、あまり差はなかったと感じています。どの試合も毎試合、素晴らしい刺激をもらうことができましたし、緊張感のある中で、非常に楽しみながら試合をすることができました」

ー広島には、年齢もキャリアも異なる選手が所属しています。そうしたバックグラウンドの異なる選手と接する際に、スキッベ監督が特に意識をされていることはありますか?

「まずサンフレッチェには、以前から『さまざまなキャリアの選手がいることを受け入れている』という風土がありました。私自身も、選手たちにそれぞれリスペクトを持って接する、クラブの風土に合わせることがもっとも大切だと思っていました」

ースキッベ監督にとって、ベテラン選手と若い選手がどのようなバランスで融合しているチームが理想でしょうか?

「まずは、お互いにリスペクトし合える関係が必要だと思っています。若手がベテランをリスペクトするという構図はわかりやすいと思いますが、ベテランたちがしっかりと若手を見ていることも重要です。キャリアのある選手たちが、自分自身のことだけでなく、若手のパフォーマンスにまで気が配れる。そうしたお互いに相乗効果のあるリスペクトの姿勢を大切にするべきだと思っています」

ードイツ、トルコ、そして代表チームなど様々な指導キャリアをお持ちですが、長い指導者人生の中で、苦しんだ時期はありましたか?

「ええ、もちろんたくさんあります。非常に成功した時もあれば、あまりうまくいかなかった時もありました。こうした経験は、人生にも直結することだと思っています。ただ、そういったことは私だけでなく、誰にでもあることなのではないでしょうか」

ーそうした苦しい経験の中から、スキッベ監督が得たものは何でしょうか。

「私が学んだのは、成功した経験、苦しんだ経験……それらを踏まえて、『楽しむこと』が非常に重要なポイントになってくるということでした。どんな時でも情熱を持って仕事に向かうのですが、『その仕事をしたい』、『トレーニングをしたい』、『チームと一緒にいたい』という気持ちを強く持つことが非常に大切で、自分の気持ちをそうやってコントロールできるかどうかが重要になってくるのではないかと思っています。これまで経験したチームは、サンフレッチェのようにオープンなクラブばかりではありませんでしたが、そういった中でも喜びを感じる気持ちを持ちながら取り組むということが、非常に重要なポイントだと考えています」

(続く)