ダイナミックな投球とピンチに動じない姿で、ここ数年リリーフとして存在感を増す矢崎拓也。昨季は離脱した栗林良吏に代わってストッパーを務め、チーム最多の24セーブをマークした。今やブルペンの柱へと成長したプロ8年目右腕が大切にする 『心のありよう』 に迫った。(全3回/1回目)

2023年シーズンは54試合に登板して24セーブをマーク。登板数と共にキャリアハイの成績を残した。

感情に流されず、ベストを尽くしたい

─2023年シーズンは数字的にキャリアハイを残されましたが、振り返ってどんな1年でしたか?

「キャンプ終盤で脇腹を痛めるところから始まり、シーズン開幕はリハビリからスタートしました。それを踏まえて考えると、すごく良いところで投げさせてもらえたり素晴らしい体験ができたシーズンだったと思います」

─ストッパーを経験されたことは、矢崎投手ご自身にとって、収穫も大きかったのはないでしょうか。

「9回でも8回、7回、たとえ負けの展開で行くときも、ピッチャーとして抑えること自体は変わらないので、やることはそれほど変わっていません。ただ、多少なりとも毎回9回で投げるというポジションをやれたことは、誰でもできるポジションではないと思うので、良かったですね。そのポジションをやることを、僕自身も想像してなかったですし、一昨年ぐらいから一軍で投げさせてもらっていましたが、それ以前の2〜3年前の自分を見て、僕が9回を投げることを想像できる人は多分いなかったのではないでしょうか。人の想像を超えることができたのであれは、それはうれしいことだなと思いますね」

─昨シーズンいろいろな経験をされた中で得た反省点や収穫を踏まえて、オフシーズンには何か強化ポイントを持ってトレーニングされたのですか?

「フィジカルについては、どちらかというとシーズンからの積み重ねですね。昔は、『もっとこうした方が良い』とか考えて、変化もしながら良いものを追い求めていましたが、10回中2〜3回できるものを、10回中7〜8回できるようになることも成長だと思うようになりました。これまでは、そうした確率を上げることよりも1回ごとのクオリティを上げることを重視しすぎていることが多かったです。そうすると、ダメだったときに『それがダメだからもっと良くならないと』と思って失敗も多かったので、今のように確率を高くできることを増やすということをこの2年ぐらいはメインにしながら継続しています」

─春季キャンプでは、新しい試みなどはありましたか?

「もともとスライダーを第3球種で投げていましたが、昨年の特に終盤はしとレートとフォークの二択になっていました。やっぱり二択になってしまうと打者を楽にしてしまうので、選択肢を増やして、少しでも相手を考えさせられたらいいなと思って、なるべく試合でもスライダーでカウントを取れるようにと思って投げていました」

─昨年ストッパーとしての活躍もあり、今年のリリーフ陣の布陣はどうなるのかと注目される中、オープン戦中盤に新井貴浩監督から『今年のストッパーは栗林』という発言がありました。それを受けて、矢崎投手はどういう心境でしたか?

「特に驚きはなかったです。起用してもらったところで自分の100%を出し尽くすことが一番だと思うので、あまり『何回を投げたい、ここをやりたい』といった思いはありませんね」

─前年にキャリアハイの数字を残した中でプロ8年目のシーズンを迎えるわけですが、これまでよりも自信を持って臨んでいる部分などはあるのでしょうか?

「あまりないかもしれないですね。どうこうしてやろうということはなく、ただ自分に起きる出来事や流れを自分の思考や感情でせき止めないようにして、言われた場所で全力を尽くすという感じです。昨年できたからといって今年も結果が出るという世界でもないと思っているので。みんなが結果を出したいと思ってやっているので、『前にできたから今回もできる』となると、『毎年できない人は絶対に今回もできない』という括りになってしまいます。そうすると、人間としての成長自体を否定してしまうことになると思うので、僕は一定の気持ちで、言われたところで全力を尽くすことをベースにしたいと思っています。これまで、結果を出したいと思うあまりに良くないこともたくさんあったので、感情に左右されることなく、結果は分からないけれど、そこで自分のベストを尽くしていく。そういう自分でありたいと思っています」