延長PKまでもつれたカップ戦、そこから中2日で迎えた天皇杯と、苦しい試合が続いたサンフレッチェ広島。新スタジアムでのタイトル獲得に向け、リーグ戦の行方への注目度はますます上がっている。ここではOB・吉田安孝氏が、今シーズン前半の広島を象徴する選手をピックアップして解説する。(取材は2024年8月)
厳しい戦いの続くサンフレッチェ広島。残念ながら国内三冠の可能性は潰えてしまいましたが、ここから先はACL2、そして重要なリーグ戦が控えています。正念場を迎えているサンフレッチェ広島ですが、今回は、今シーズン広島のストライカーとして活躍し、夏に海外挑戦を決めた大橋祐紀について振り返っていきたいと思います。
今季、大橋がいてくれたからこそ勝つことのできた試合は数えきれず、チームへの貢献度が高い選手の一人といって間違いないでしょう。チーム内得点王でもある選手が移籍してしまうのは大きな痛手ですが、大橋自身、もともと海外志向の強い選手だったようですし、本人も話していたように年齢的にもラストチャンスであることには違いありません。2024シーズン前半、チームに大いに貢献してくれた大橋の挑戦は応援したいですし、同じ思いのサポーターも、きっと多いことだと思います。
大橋は移籍直前の試合でもゴールを決めていますが、ゴールだけではないチームへの貢献も見逃せません。シーズン前半戦でしっかり勝ち点を積み、カップ戦でも勝ち上がることができていたのは、大橋の働きなくしては考えられません。昨シーズン悩まされていた 『決定力不足』を払拭してくれた存在というだけでなく、広島のサッカーにもフィットして、数字には現れない守備の部分でも献身的にプレーしてくれていました。90分間、最後の最後まで走りきる姿勢。ゴールに直接絡まなくても、絶妙な時間帯にコーナーキックを奪うなど、周りの選手から見ても、本当に頼もしいプレーを数多く見せてくれました。
相手DFとの巧みな駆け引きも非常に上手く、単独でシュートにいくこともできる。かと思えば、周りからパスをもらってシュートに持ち込むなど、チームメートとのコミュニケーションを大切にする選手だったのではないかと思います。自分の欲しいパスを周りに要求するなど、『自分がどうしたいか』をしっかりと共有しながらプレーをしていたのではないでしょうか。ただ、最後は自分が決めるんだという、ストライカーらしいエゴイストな姿も印象的でした。そして、「自分が点を取れれば良い」というわけではなく、チームのために戦う献身的な姿を自ら出すことができるのも、大橋がチームにフィットした要因でもあるでしょう。
新天地でのさっそくの活躍も記憶に新しい大橋ですが、その貢献度の高さゆえに、移籍を残念に思うサポーターは多いはず。川辺駿、トルガイ、パシエンシアといった新戦力の活躍も期待しつつ、残り9試合の行方に注目していきたいと思います。