カープ球団を支える人たちにスポットライトを当て、裏側の仕事について探る本連載。今回は、現役時代に中日、広島の2球団で活躍した久本祐一さんが登場。現役引退後は打撃投手としてチームを支えている久本さんに「打撃投手のやりがい」や、「現役時代との違い」について聞いた。(全3回/1回目)

カープには2013年から4シーズン在籍し、52試合に登板した。

 僕がカープで打撃投手を務めるようになって、2024年シーズンで4年目です。現役引退後の2016年から中日で4年間打撃投手を務め、2021年にカープに戻ってきました。

 カープで現役を引退したあとはトライアウトなども受けましたが、現役を続けたい気持ちがある一方で、僕の中には、「お世話になったチームに恩返しをしたい」という思いもありました。そのタイミングで、中日の落合博満GM(当時)から声を掛けていただき『恩返しをするならまずは中日からが筋だろう』と考えて引き受けることにしました。その後、カープから『左の打撃投手がいない』という相談を受けて、今度はカープに恩返しをするチャンスだと感じたのがカープに戻った理由の一つです。

 カープに戻った当時は現役時代一緒にプレーした選手が残っていて、知っている顔も多かったですし、人間関係をつくりあげるという面では入りやすかったですね。実は、中日で打撃投手をしていた当時、家族は広島で暮らしていて、僕が単身赴任をしていたんです。ですから広島という街に対しては住み慣れた場所でしたし、「ただいま」という感じでした(笑)。

 打撃投手の主な役割は、試合前の練習で野手の打撃練習の際に投球をすることです。現役時代は『打たれないこと』が大切でしたが、打撃投手としては、『いかに野手に気持ちよく打たせるか』が重要です。まったく違う役割なので、よく「苦労するんじゃないか」と言われるのですが、僕自身は、特に感じたことはありません。

 現役の時は、打者に向かって全力で投げていましたが、今はキャッチボールの感覚で投げています。違いというと、その部分だと感じています。あとは、自分にとって良いフォームで投げると当然、速い球、力のある球がいってしまうので、逆に『自分にとってはダメなフォーム』で投げることも大切にしています。ただ、これは僕が試行錯誤しながらたどり着いた考え方なので、他の打撃投手も同じように考えているかはわかりません。

 自分自身で探りながら、自分に合った投げ方を編み出すというのは、現役投手でも打撃投手でも同じで、大変な部分なのかもしれません。(第2回に続く)