カープ球団を支える人たちにスポットライトを当て、裏側の仕事について探る本連載。 今回は、雨にも負けず風にも負けず、試合開催のために力を尽くす石原裕紀さんに「グラウンドキーパー」の天敵や仕事の難しさ、やりがいを聞いた。
◆この道25年のベテラン職員。常に自然と戦うプロフェッショナル
僕たち『グラウンドキーパー』が所属しているのは、カープの施設運営部です。基本的にはグラウンドに関わる業務全般、例えば試合の用意や練習の準備などを担当しています。
僕は生まれが島根県で、佐々岡(真司、前監督)さんと同じ浜田商高の出身です。僕も野球部員だったのですが、高校3年の時、当時の監督に「グラウンドキーパーという仕事があるが、やってみないか」と声をかけてもらったことでこの世界に足を踏み入れました。
当時はグラウンドキーパーがどんなものかをあまり理解できていませんでしたから、最初は「どうしようか……」という気持ちもありました。ただ、高校を出たら就職したいと思っていましたし、島根を離れて一人暮らしをしてみたいという思いもあったので(笑)、入社することを決めました。そこからずっと、グラウンドキーパー一筋で25年間やってきています。
僕が入社した当時は旧広島市民球場がカープのホーム球場で、マツダ スタジアムよりも土の部分が多かったんです。内野は全部土でしたから、雨が降ると溝みたいなものができてしまっていました。均(なら)しても、雨が降ればまた元に戻って……と、その繰り返しです。当時は整備用の機械もあまりありませんでしたから、ほとんどが手作業で対応していました。僕たちはチームのキャンプにも帯同するので、マツダ スタジアムとキャンプ地でもグラウンドの状態は異なります。同じ状態のところはありませんから、そこには一番苦労をしました。
普段の動きですが、ナイターの場合、グラウンドキーパーはだいたい朝9時半には球場に入ります。12時過ぎには早出の選手たちのバッティング練習があるので、それに間に合うように整備を進めていきます。僕たちの仕事にとって一番大変なのは、やはり『天気との戦い』です。特に難しいのが、試合が開催できるかできないかの瀬戸際のような天気の時の対応です。天気予報のチェックは欠かせませんし、アプリを活用して細かく雨雲の動きを追いかけることもあります。
逆に土が乾燥しすぎてもダメですから、試合前や試合中の散水も大切な仕事の一つです。季節によってもグラウンドのコンディションは変わりますから、春先であればあまり乾くことはないから少なめに撒いたり、デーゲームであれば多めに撒いたり、同じ季節であっても、その日の天気を見ながら水分量を調節する必要があります。その日の天気に合わせて、撒く水の量を自分で調整することができるようになれば『独り立ち』と言ってもいいかもしれません。
試合が始まると、今度は『時間との戦い』になります。イニング間が短ければ、2分で整備を済ませなければいけない場合もありますから、とにかく荒れている箇所を中心に整備をしていきます。