鈴木誠也の打撃は、何が進化しているのか?

鈴木誠也選手は、2016年から4年連続3割、25本塁打以上をマークするなど、言うまでもなくバッティングは一流です。今の鈴木誠也選手には苦手コースがなく、右投手も左投手も分け隔てなく打っています。また、もともと、外に逃げる変化球を見極めることができていたため率が残っていましたが、ここ数年は、フォークやSFFなどの落ちる球もしっかりと見極めています。

 前回のコラムで『ピッチトンネル』理論の話をしましたが、鈴木誠也選手は、ピッチトンネルを通してきた落ちるボールにもピタッとバットが止まる。つまり、今の鈴木誠也選手はピッチトンネルを通すだけでは打ち取れないというわけです。これは投手からすると非常に厄介です。

 そして、あくまでもデータ上の話ですが、プロに入ってから唯一苦手にしていた内角高めのコースも、2017年には克服しているようです。

 普通、体が大きい打者は打席で窮屈そうにインコースをさばきますが、鈴木誠也選手はしなやかにインコースをさばいています。これは柔軟性のトレーニングをしっかりとこなしている証拠だと思います。

 もともとポテンシャルが高いのに、現状に満足することなく、数々のトレーニングをこなしているに違いない体をみると、メジャーでも打撃タイトルが獲れるのではないかという期待を抱いてしまいます。

 メジャー挑戦に関してはいろんな意見があるでしょうが、挑戦するかしないかはさておき、個人的には、プロ野球選手である以上、そういったチャレンジ精神は持っていてほしいと思っています。これはすべての選手に言えることですが、リーグ優勝をしてタイトルをとり、年棒も上がると、その現状に満足してもおかしくありません。ただ、目標がないと成長はストップしてしまいます。

 これまで数々のプロ野球選手を指導してきましたが、毎年結果を残し続ける選手は、常に目標をしっかりと描いています。そして、自分の悪いところ・弱点を冷静に理解し、取り組むべきことと向き合っています。鈴木誠也選手も、そのときそのときで、自分がやるべきことを見つめ、それを克服するためにトレーニングを重ねてこられたのだと思います。

 そして、改めてすごいと感じるのは、鈴木誠也選手を発掘したカープスカウトの手腕。走攻守で高いポテンシャルを感じさせるこれだけの素材をよく見つけてきたなと思いますね。

 次回のコラムでは、鈴木誠也選手のようなプレイヤーを目指している球児のみなさんに向けて、バッティング能力向上に役立つトレーニングを紹介したいと思います。

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高島誠(たかしま・まこと)
広島県東広島市の西条町にある、野球専門のトレーニングジム「Mac's Trainer Room」の代表。オリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バファローズ)、MLBワシントン・ナショナルズのトレーナー経験があり、現在も数多くのプロ野球選手とトレーナー契約を結んでいる。趣味はパルクールとサウナで、サウナ・スパスペシャリストの資格も持つ。野球トレーニングのオンラインサロンの運営、【英語】x【身体作り】x【野球】がテーマの中学硬式野球チーム「東広島ポニー」に携わるなど、様々な分野で活躍。「Mac's Trainer Room」のYouTubeチャンネルでは、野球トレーニングに関する動画を公開中。
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