新背番号96、打撃力を活かすべく外野手登録となって迎えた2024年。中村奨成は一軍での出場機会を得たものの、不完全燃焼のシーズンとなった。不退転の覚悟で臨む8年目に向けて、すでに戦いは始まっている。(全2回/第1回)

70打席に立ち10安打1打点。本塁打は0に終わった

空回りしたシーズン

─昨季、プロ7年目のシーズンを終えました。振り返ってみてどのようなシーズンだったと思われますか。

「やっぱり悔しかったです。チーム的にも、個人的にもそうですね。今年はチームが優勝争いするタイミングで一軍に上がらせてもらいました。このタイミングで呼んでもらえたということに、自分自身でも『戦力として見られているんだ』という思いがありました。上がったからには、チームの優勝に貢献したいという思いがありました。スタメンで使ってもらって、打てた試合ももちろんありましたが、帯同させてもらう中で負けが続いてしまう試合もありました。そんな時はチームの力になれなかったというのが自分自身悔しいところですし、納得のいくような成績を残してないので悔しかったですね」

─二軍で結果を残されて、満を持して一軍に上がりました。

「実力不足をすごく感じていますし、ここ数年は二軍で出ても……というところがあったので、このオフで、そのあたりの技術をもっと磨いていければ良いかなと思っています」

─2024年シーズンは自己最多の70打席に立ち、さまざまな経験をされた年でもあったと思います。優勝争いも経験された一方で、9月はチームも厳しい状況になりました。ベテラン選手でも経験したことのないような時期を過ごされたかと思うのですが、その経験はいかがでしたか?

「2024年はたくさん経験をさせてもらいましたが、それを踏まえても、やはり悔しい1年でした。2025年も同じような結果を繰り返していると、僕自身、立場的にも危ういところにいます。今年が終わった時に、『2024年シーズンを活かすことができた』と言えるようにやっていきたいと思います」

─中村奨選手は、バッティングを期待されている面が大きいと思います。2024年シーズンを通して、ご自身の打撃面で収穫したこと、課題などがあったと思います。何か手応えはありましたか?

「2024年シーズンは外野でスタメン出場させていただくことも多かったですし、1試合で4打席に立たせてもらえたこと、その中で、緊迫した場面で守らせてもらうこともありました。これまでは、同点の延長に入ると守備固めを出されて交代という場面も経験していますし、4打席に立つということはなかなかないシーズンもありました。そういったところを自分の中でプラスに捉えていますし、とても良い経験ができたと思っています」

─2024年シーズンは、本格的に外野手へと転向した年となりました。守備に対する自己評価はいかがですか?

「ほぼ秋山(翔吾)さんに助けてもらいましたね。秋山さんを見ていれば、指示を出してくれますし、ついていけば楽な部分がありました。ただ、秋山さん頼りにならずに、 逆に秋山さんにも自分の思いを伝えたり、会話できるようにならないといけないと思います。2025年シーズンは自分からもきちんと意見が言えるようになれば良いなと思っています」

─秋山選手と話し込む場面も印象的なのですが、中村奨選手にとって秋山選手はどんな存在ですか?

「本当に“お手本”ですね。秋山さんを見ていれば誰が外野についてもアドバイスが的確です。もちろん僕とは経験の差が全然違いますが、その辺りのお話や、横にいるだけで安心できる大きな存在ですね」

─昨年は、新井貴浩監督体制2年目でした。新井監督のもとプレーされたこの2年で、印象的なことはありますか?

「今若い選手がどんどん増えて出てきている中で、その辺の競争意識を強く感じています。僕よりも若い選手がいる中で、プレッシャーと言いますか、『彼らは下でこれだけ打っている。自分もトロトロしていたら入れ替えもある……』というような思いが常にありました。良い意味でのプレッシャーというか、競争というか、そういう思いがすごく生まれたのかなと思います」

─同じ右打者で言うと、中村奨選手よりも年下の、内田湘大選手や、仲田侑仁選手などがいます。同世代や、年下選手はやはり意識しますか?

「ポジションが違うのでそこまで意識はしないですが、そういった年下の良い選手がいるので、負けていたらレギュラーはもちろん、試合出場もなくなると思います。外野手で言えば秋山さんや、スエさん(末包昇大)をどかしてでもスタメンで出れるぐらいじゃないと、競争を勝ち抜いていくのは無理だと思っています」

(後編へ続く)