栃木県日光市にホームを置き、アジアリーグアイスホッケーに所属するアイスホッケーチーム『H.C.栃木日光アイスバックス』(以下、アイスバックス)は今シーズン、チーム創立25周年の節目を迎えている。

 チームは4シーズン目の指揮を執る藤澤悌史監督の元、9月に開幕した2024-2025シーズンで熱い戦いを繰り広げている。ここでは指揮官である藤澤悌史監督に、改めてチームに対する思いを聞いた。

H.C.栃木日光アイスバックスの藤澤悌史監督

◆入団から25年後に監督ができるなんて全く想像もしていなかった

―藤澤監督は現役時代、アイスバックスの前身である古河電工からプレーされています。入団のきっかけを教えてください。

「西武鉄道アイスホッケー部を戦力外になったのですが、当時はあまり移籍というのはなかったんです。今でいうところのFAみたいな感じで、古河電工が手を挙げてくれたのが経緯です。日光が好きで、縁があると感じていました。何よりまだ私自身が若かったですし、もっとホッケーをやりたかったんですよね」

―当時のチームで印象に残っていることはありますか?

「チームはすごく仲が良かったイメージです。それまでの経験ではチーム内での競争が激しかったこともあり、あまり感じることはなかったのですが、古河はベテランの選手もみんな優しい方たちでした」

―古河電工からアイスバックスとして再出発しました。当時の思いを聞かせてください。

「初めてのことで、何も分からなかったのが本音です。当時の選手はホッケーをやりたい一心で頑張っていましたが、古河が2年間給与の保障をしてくれたことが大きかったと思います。それで選手も続けながら、会社に残るかホッケーをやるのかを考えることができました。当時はまだ電工リンクもあり、日光には根強いファンがいました。もしかしたら他の地域だったら無くなっていたかもしれないとは思います。日光だから成し得たのかもしれないと感じています」

―『暗黒時代』と言われていましたが、実際に選手としていかがでしたか?

「『暗黒時代』ではありますが、僕自身は楽しかったです。人は極限になると『みんなで頑張ろう』という仲間意識や絆が生まれるものだなと。選手同士でいろいろな話をした記憶があります。お金は無いし、試合には勝てないし、相当しんどかったですけど『ホッケーが好き』というのがモチベーションでした。そしてファンのみなさんの存在です。もしファンのみなさんがメガホンを叩いて盛り上がる状況でなければ、心が折れていたかもしれません。ファンのみなさんの応援が本当に力になりましたね」

―当時と現在とでファンの方々の違いはありますか?

「今のファンのみなさんは、良い意味で勝ちに慣れているイメージです。当時のファンのみなさんは勝ちに慣れてなかったと思うので、そこが違いかな?と思います。ただ、勝ち慣れないのは選手も同じです。実際、最近までリードしていてもどこかで捲られるんじゃないかという不安のようなものを選手からも感じていました。それはよくない伝統なので、僕が監督になって変えたかったところでもあります」