カープのチーム・ライフサイクル

 新製品が市場に導入され、売れなくなるまでの周期をプロダクト・ライフサイクルという。その周期は導入期、成長期・成熟期・衰退期の4つの局面に分けられ、それぞれ特有の市場力学が働いている。

 認知度が低い導入期にはプロモーション(意識づけ)を、成熟期には差別化や次なる新製品(戦力)開発を行うなど、メーカーは製品ライフサイクルが位置する局面を見定めて打ち手を選択しなければならない。

 こうしたライフサイクルは製品のみならずチームにも存在している。ラグビー日本代表チームは、エディ・ジョーンズヘッドコーチのハードトレーニングとジェイミー・ジョセフヘッドコーチの創造性豊かなラグビーによって、段階的に成長サイクルを描き、2019年のラグビーW杯でベスト8を達成した。

 この結果は、チームのライフサイクルとリーダーの求めたスタイルが合致した成果といえるだろう。ではカープにおける70年のチーム・ライフサイクルはどういった波だったのだろうか。

 カープは成長期まで26年を費やし、1975年に初優勝を果たした。これをきっかけに1980年代の成熟期へと移行し、1991年までに6度のリーグ優勝、3度の日本一を達成した。

 その後、カープは衰退期を迎えることになった。ここまでがファースト・サイクルといえるだろう。カープが2度目の成長の波を迎えるのは、それから四半世紀近い時を経なければならなかった。

 3連覇を2度目の成熟期と捉えるならば、カープは再び暗黒時代を迎えるのだろうか。

 たしかにその要因はある。すでにカープの競争モデルは模倣されている。特に近年の巨人は貪欲にカープの競争モデルを取り込み、進化を遂げているように感じる。さらに言えば、カープには世代交代の波も訪れつつある。

 衰退期を避けるためには、メーカーが新製品を投入するように、次世代野球の新戦力を仕込まなければならないのだ。生物学者・ダーウィンがいうようにカープも環境変異に対応できなければ、淘汰されることになるだろう。