熟成させた打撃の誇り

 フランス・ボルドーのワインは、力強く重厚な味わいを出すために複数品種のブドウをブレンドして10年以上かけてゆっくりと熟成するという。

 堂林の打撃も苦い経験と技術を積み重ねる時間が必要だったのだろう。野村謙二郎監督によって仕込まれ、自身の“必死さ”によって芽生えた打撃は今、深い味わいを醸し出している。

 徐々に出場機会が減少していた堂林は、2016年オフに新井貴浩に師事し、護摩行にも挑んだ。さらに昨季オフには後輩・鈴木誠也にも教えを請うた。

 堂林が経験した“2度の苦い優勝経験”は、緩やかだった成長曲線の傾きを変え、一気にてっぺんに向けての弧を描かせたといっていい。

 3連覇に間に合わず、再ブレイクの時機を逸したかに見えた堂林だが、今シーズンは、その活躍がカープを暗闇から立ち上がらせる“あきらめない”希望のしるしとなっている。