循環を上昇させる力

 栄枯盛衰、競争環境においてチーム・サイクルの循環を避けて通ることは難しい。しかし、打ち手によっては、その波形や振れ幅は変えることはできる。

 メーカーが成熟期の製品をモデルチェンジするように、3連覇後に開花した堂林や若手はそのライフサイクルの曲線を上方修正する役割を担うことができるだろう。

 そしてもう一人、修正の鍵を握るのがカープのセカンド・サイクル(2010年代)と同じ波形で成長してきた會澤翼だ。會澤も堂林同様、10年の時を経て、正捕手になった。

 打撃での成長のみならず、石原慶幸から“捕手”を学び、チームの信頼を勝ち得た會澤の“経験”は3連覇における最大の財産といってもいいだろう。

 2020年は厳しい戦いを強いられているカープだが、この窮地で頼るべきはやはり會澤ではないだろうか。要である會澤の進化はカープのライフサイクルとシンクロナイズする。會澤がここから選手として上昇曲線を描くことで、再びカープは衰退期に入ることを防ぐことができると私は感じている。堂林と會澤の熟成した成長の波力は、他チームに模倣されない新たなカープの強みをつくり出し、チームの循環を再び上方へと押し上げてくれることになるだろう。

完全な衰退期に入る前に再び上昇曲線を描けるか、それが今後のチームの浮沈の鍵を握る。

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高柿 健(たかがき けん)
広島県出身の高校野球研究者。城西大経営学部准教授(経営学博士)。星槎大教員免許科目「野球」講師。東京大医学部「鉄門」野球部戦略アドバイザー。中小企業診断士、キャリアコンサルタント。広島商高在籍時に甲子園優勝を経験(1988年)、3年時は主将。高校野球の指導者を20年務めた。広島県立総合技術高コーチでセンバツ大会出場(2011年)。三村敏之監督と「コーチ学」について研究した。広島商と広陵の100年にわたるライバル関係を比較論述した黒澤賞論文(日本経営管理協会)で「協会賞」を受賞(2013年)。雑誌「ベースボールクリニック」ベースボールマガジン社で『勝者のインテリジェンス-ジャイアントキリングを可能にする野球の論理学―』を連載中。