組織論・戦略論 などの視点から、近年のカープの強さ・魅力の秘密を紐解いていく、広島アスリートマガジンwebでしか体感できない講義・『カープ戦略解析室』。案内人は、高校野球の指導者を20年務め、現在は城西大経営学部准教授として教鞭をとるなど多彩な肩書きを持つ高柿健。8回目の今回は、カープに息づく“チーム・ライフサイクル”について考えていく。

 

2度の苦い優勝経験

 新型コロナウイルスの感染拡大のリスクから中止となった夏の甲子園大会。今から11年前の夏決勝、史上最多となる7度目の全国制覇を達成したのは、現在カープに在籍する堂林翔太と磯村嘉孝がバッテリーを組んだ中京大中京高校(愛知)だった。

 しかし、優勝決定の瞬間、エースで4番であった堂林はマウンドにいなかった。

 中京大中京が10-4と大量リードで迎えた9回、一度降板していた堂林は志願して再登板した。しかし、“二死走者なし”から日本文理高校(新潟)の猛追を受け、再び降板することとなった。

 最終的には10-9に追い詰められた末の薄氷の勝利に、エース堂林は優勝インタビューで泣きながら謝罪した。彼にとっての甲子園優勝は、喜びと悔しさの入り混じった複雑なものだったに違いない。

 そして堂林はプロ入り後、再び“悔しさ”を感じることとなる。それが2016年からのカープの3連覇だ。

 2012年、堂林は野村謙二郎監督の期待を背に、全144試合に出場してチーム最多の14本塁打を記録。若きスラッガー誕生の予感にカープファンは大きく湧き、2013年には背番号7を受け継いだ。若くして将来を渇望されていた選手だっただけに、3連覇のスターティングメンバーに堂林の名が連ねていなかったのは、2012年時点で多くのファンが予想していた未来とは異なっていたものだろう。