4月5日にルートインBCリーグが開幕する。今季、埼玉武蔵ヒートベアーズ(ヒートベアーズ)は、現役時代にロッテで活躍した清田育宏新監督を迎えて2年ぶりの優勝を目指す。ここではシーズンに臨む清田監督の思いに迫る。

埼玉武蔵ヒートベアーズ清田育宏新監督

―ヒートベアーズとの最初の関わりは解説者としてだったそうですが、どのようなことを意識されていましたか?

「そうですね、『見たままを喋ろう』というのを意識していました。自分なりの考え方を伝えられたらいいなと思っていて、考え方って人それぞれ違うじゃないですか。だから、『僕はこう考えています』というのを素直に伝えられたらなという気持ちで話していました」

―その後、選手としてヒートベアーズへ入団し、プロに進んだ選手たちから『清田さんの影響で変わった』といった声も多く聞かれます。ご自身は、どのような姿勢で若い選手たちと向き合ってきたのでしょうか?

「プレーする上で、『チームのために、選手のために、どう良い影響を与えられるか』を常に考えていました。その中で影響を与えるためには、やっぱり“圧倒的な力の差”を見せつけることが必要だと思っていたんです。例えば、『準備の大切さ』を口だけで言っても選手には伝わらないので、朝一番に来て一人でランニングするとか、黙って行動で見せることを意識してやっていました」

―BCリーグの選手とNPBの選手で違いなどはありますか?

「選手はみんな頑張っていますし、そこに大きな差はないと思います。ただ、プロに行けるかどうかはスカウトの目に留まるか次第です。どんなに良い選手でも、評価されなければプロに行けない。それが難しいところですね。だから、プロに行った選手たちは、『頑張った結果が評価された』ということだと思います」

―今シーズンから監督に就任されましたが、どのようなチームをつくっていきたいと考えていますか?

「ファンのみなさんが『このチーム、見ていて楽しい』と感じてもらえるようなチームをつくりたいと思っています。特別ピッチャーがすごいとか、ホームランが多いとか、足が速いとか、そういう選手がいるわけではないのですが、みんなコンスタントに野球ができる選手ばかりです。だから、『普通のことを普通にやろう』『自分にできることを全力でやろう』というチームを目指しています。全力で走る、最後までプレーを諦めない。そういう基本を大事にしたいです」

―ヒートベアーズは3年連続でプロ野球選手を輩出しています。チーム内には、彼らに続いていこうという空気感はありますか?

「今の選手たちからはあまり感じないですね。もっと『絶対にプロに行く』とか『レギュラーを取る』という強い気持ちは表に出てきても良いとは思っていますし、少し物足りなく思う部分もあります。たとえばキャッチャーはチームに4人いますが、その中の1人しか試合に出られません。『自分はここが他より優れている』というところをしっかりアピールしないと試合に出られないよということは選手たちにはっきりと伝えています」

―今シーズンの注目選手を教えてください。

「投手では、大宅(健介)、今村(虎楠)、平沢(燎)。この3人にはぜひ頑張ってもらいたいです。野手では、大城(龍馬)、坪井(壮地)、増田(雄仁)といったクリーンアップを担う選手たちですね。もちろん全員に期待していますが、やっぱり中心を担う選手たちには責任感を持って臨んでほしいです。勝ち負けの責任は監督が取りますが、彼らにはしっかり頑張ってもらわないとチームが成り立たないと思っています。三振やエラーに対して怒ることはしません。ただ、エラーのあとにどうするか、三振のあとの打席をどう迎えるか。そこに熱意が感じられない選手は下げます。とにかく“プレーに熱を込めてほしい”と思っています」

―ヒートベアーズの応援は、応援歌の選曲をはじめとして独自の雰囲気があります。監督として、どう感じていますか?

「本当にありがたいです。ロッテ時代の応援もすごかったですが、独立リーグで毎試合応援に来てくれるような球団って、ほとんどないですからね。選手たちにも『応援されるありがたさ』をもっと理解してほしいと思います。エラーは仕方のないことですが、もし取れるアウトが取れなかったことで、次のバッターにホームランを打たれたとします。そうしたら投手の評価が下がって、その結果、その投手はNPBに行けなくなるかもしれない。選手たちは一人ひとり、チームメートや、他の誰かの人生も背負っています。だから『この投手のために守ろう』『熱心に応援してくれるファンのために戦おう』と思ってプレーしてほしいです。自分のためではなく“人のため”にプレーする、そういう気持ちを持ってもらいたいですね」

―今のチームの雰囲気や成長についてどう感じていますか?

「すごく良い雰囲気です。3月頃はまだバラバラな感じもありましたが、今はみんな自覚を持ってプレーしています。もちろん勝ち負けは大切ですが、『最後まで諦めない試合』『見ていて心を動かされる試合』をしたいです。そして、みんなで一緒に戦っていけるチームでありたいと思います。選手も桝田コーチも本当に頑張っていますし、みんな自分の役割を理解して戦っています。我ながら“良いチーム”だと思うので、ぜひ応援してくださるとうれしいです」

―チームとしての目標を教えてください。

「もちろん優勝です。それがチームとしての明確な目標です。個人としては、選手それぞれプロを目指してもらって構いませんし、むしろその意識は大切です。ただ、負けているチームよりも勝っているチームの選手の方がプロから指名されやすいとも思うので、“勝つこと”がプロへの近道だということも伝えています。僕自身も初年度の監督として『甘く見られたくない』という思いもあります。みんな『そんな監督業は甘くないぞ』と思っているはずなので、それを覆したいですね」