カープ球団を支える人たちは、どんな仕事をしているのか?本連載は、さまざまな立場・場所からチームを支える人たちにスポットライトを当て、裏側のお仕事について探っていく。ファビアンらの活躍もあり、今シーズン注目を集めているドミニカ選手通訳のフェリシアーノさんに球団への思いを聞いた。(全2回/第2回)
◆ベンチ裏では、配球についてアドバイスをすることも
彼らの活躍もあり、ヒーローインタビューに選ばれる機会が増えました。ただ、私が一番得意とするのは、ベンチの中でのコミュニケーションです。なので……カープファンのみなさんの前で、話すことは緊張するので少し苦手です(笑)。
例えば、日本語からスペイン語には、綺麗に表現して伝えられるのですが、スペイン語から綺麗な日本語に直して、選手の気持ちを伝えることはすごく難しいです。また、日本に方言があるように、ドミニカ人のスペイン語にもいろんな方言があります。ヒーローインタビューは、時間がないので慌てて訳してしまうと、ファンのみなさんが笑っているので、『変なことを言ったかな? 大丈夫かな?』と心配になることもあります(苦笑)。
ですが、ファンのみなさんに喜んでいただけているようですし、私にとっても楽しみにしている場所です。ちなみに、Tシャツになったモンテロの「サイコーデス!」は、『モンテロ本人が“最高です!”と言った方が盛り上がるから、言ってみて』と伝え、言ってもらいました。すごく盛り上がっていてうれしかったですね。
試合中、私はベンチにいて、常に通訳としてコーチからのアドバイスをファビアンとモンテロに伝えたりしています。それからベンチ裏で動画などを見て、2人の打席前には配球のことなどで私が感じる部分をアドバイスすることもあります。
私にとってカープ球団はとても特別な存在です。現役時代、レッドソックスアカデミーでプレーしていた頃からカープアカデミーが私のプレーを見てくれていました。私がレッドソックスを戦力外になった次の日にはカープアカデミーに呼んでくれました。本当に感謝の気持ちしかありませんし、チャンスをもらえてすごくうれしかった、この気持ちは忘れられません。
日本でもプレーさせてもらい、引退後は再び声をかけてもらってドミニカでカープアカデミーのコーチとなり、通訳の仕事もさせてもらっています。本当にオーナーをはじめ球団の方全員に感謝しています。素晴らしい球団だからこそ、私はずっと長くドミニカ選手と球団をつなぐ関係でいたいですし、これからもずっと貢献したいと思っています。
通訳の仕事は、選手が活躍するためにとても重要な役割です。選手が理解しやすいように、より工夫をして伝えられるように頑張っています。日本は考え方や感触をすごく大事にします。選手時代の経験がすごく活きていますし、そのおかげでサポートすることができています。
実は7月にクレートと交代でドミニカに戻る予定でしたが、選手や監督たちは「シーズンが終わるまでいてほしい」と言ってくれました。ドミニカの家族の事を考えると寂しい気持ちもありますが、家族は『いまドミニカに帰ったら選手と球団が困るかもしれない』と背中を押してくれました。家族が広島に来れれば良いのですが、ここは我慢をします。
私が残る決断をしたのは、カープは雰囲気が良く、家族のようなチームだからです。そしてドミニカ出身選手たちは私を『お父さん』のように慕ってくれていて、素直で素敵な選手たちです。父親という存在のように普段は優しく接していますが、言う時は厳しく指導もしています。
これからもカープ球団やチームに貢献するために私は広島で頑張ります。ファンのみなさん、これからもドミニカ選手たちへ、たくさんの声援をよろしくお願いします!
■ファン・フェリシアーノ
1980年4月6日生まれ、ドミニカ共和国出身。ボストンレッドソックスアカデミー、カープアカデミーを経て、2002年にカープ練習生としてカープ入団。2004年に支配下登録されて3年間プレー。その後、イスラエル、メキシカンリーグなどを経て、2011年からカープアカデミーのヘッドコーチに就任。2019年からは通訳としてもドミニカ選手をサポートしている。