華麗なボールタッチとスピード、単騎で局面を突破できるテクニック。誰もが認めるドリブラー・前田直輝は今、新天地でその闘志を燃やし続けている。前線の起爆剤として期待されるFWが広島で向き合う手応え、そして自身が向かい合う課題を語った(全3回/第1回)
◆移籍の決め手は広島の魅力的なサッカー
—今季、浦和から広島に完全移籍で加入されました。まずはここまでの手応えを教えてください。
「移籍当初は自分でも非常に良い入りができたと思っていました。自分のアピールポイントが十分に出せた試合も多かったという手応えがありましたが、今は、徐々にそれが薄れてきてしまったという印象が強いですね。もっとチームの勝利に貢献できるプレーをしなければいけない。今はその気持ちが強いです」
—薄れてしまった特徴とは、具体的にどのような部分でしょうか。また、その要因をどのように分析されていますか。
「実際にチャンスクリエイト数も減ってしまっていますし、逆にボールロストの数は増えてしまっていると感じます。最初は『自分をアピールしなければ』と、とにかくストロングポイントを活かしたいという思いでプレーしていたのですが、『チーム全体のために』という視点で考えた時に、それはどうなんだろうと。僕自身の強みを活かしたいという気持ちと、チームのために、という気持ちのなかで迷いが出てしまっているというか……。その迷いが、プレーにも少なからず影響しているのではないかと思います。ただ、逆にそこをクリアにすることができれば、また変わってくるのではないかとも思っていますね」
—スキッベ監督からは、どのようなプレーや結果を求められていますか。
「自分のポジション(FW)は、裏に抜ける動きや守備時の前からのプレッシャー、球際の部分で負けないことを求められると思っています。このチーム、このエンブレムを背負っているからには結果を出さなければいけないと思っていますし、監督からも『もっともっと自信を持ってやってくれ』と言ってもらえているのですが、なかなか数字として出せていないのが悔しい現状だと受け止めています」
—加入会見では、そのスキッベ監督のサッカーを非常に魅力的に感じたとコメントされました。移籍を決断した大きなポイントだったかと思います。
「チーム全員からポジティブなオーラが出ているのは、広島の特徴の一つだと感じます。それは監督がつくり出したものだと思っていますし、その影響もあってかネガティブな発言や行動をする選手はひとりもいません。それは試合中でも同じで、だからこそ、常に前に向かっていく姿勢、守備も攻撃も前から行くという、強気な攻撃ができているのだと思っています。そうした雰囲気の中でサッカーをするのはやはり楽しいですし、僕自身、この雰囲気、このプレーを続けて突き詰めていって、もっともっと魅力的なサッカーにしていきたいという欲もあります」
—外から見ていたサンフレッチェ広島というチームと、中に入って感じたサンフレッチェ広島というチームで、違いを感じることはありますか。
「いえ、良い意味で本当に予想通り、印象通りというのが正直な感想です。練習から全員が本当にハードワークしていますし、一つの球際、一つの勝負にもすごくこだわっているのを感じます。それは外から見ていた時から『きっとそうだろうな』と感じていたことで、だからこそ毎年上位にいるチームなのだと改めて感じました」
(第2回へ続く)