野村謙二郎、前田智徳、金本知憲らと共に『ビッグレッドマシン』と呼ばれた超強力打線を形成した江藤智。4番打者として本塁打王(2回)、打点王(1回)などのタイトルを獲得した。

◆新陳代謝を促すという意味ではFAも悪くない

 オレが所属している新日本プロレスも昔から選手の出入りが激しい団体で、いろいろな選手が他団体に移っていきました。ファン時代にショックだったのは、2002年に武藤敬司選手が全日本プロレスに移籍したときですね。武藤選手のファンだったので、カープから江藤さんが出て行ったときと同じぐらいショックでした。こんなにショックな出来事がプロレス界でも起こるんだなって。

 当時、自分の部屋にプロレスラーのフィギュアを飾るために小さいリングを置いていたんですけど、移籍と同時に武藤選手のフィギュアは机の中に仕舞い込んでしまいました。もう新日本のリングには立たせないと思ったし、武藤選手のTシャツも一切、着なくなりました。

 さっきも言ったように、プロレスは自分の好きな団体に入れるわけですよ。それで「なぜ辞めていくのかな?」っていうのは思いますね。もちろん本人の意思は尊重するし、入門した頃とは気持ちが変わることもあれば、環境を変えたいとか、ある程度やり尽くしたら次の目標も出て来ることもあるでしょう。

 ただ、退団する選手の壮行試合を組んだり、盛大に送り出したりする団体のやり方はどうなのかなって。なにもなく退団していく選手だっているのに、その扱いの差はなんなのかなって。

 でも、これは野球もそうだと思いますけど、選手が抜けていくのは悪いことばかりでもないと思います。カープでも江藤さんが出て行ったら金本さんのファンになり、金本さんが出て行ったら新井さんのファンになったみたいに、選手が抜けたら抜けたで、ファンはまた好きな選手が出て来るし、チームとしても空いたポジションを奪うために選手たちが競争するわけですからね。

 新日本プロレスも橋本真也さん、武藤選手とか団体を支えていた選手が次々に抜けていって、どんどんお客様も少なくなっていったし、ファンながらに「新日本プロレス、どうなっちゃうんだろう?」っていう不安はありました。でも、そこで新しく出て来たのが棚橋弘至選手とかで、そのあともどんどん新しい選手が活躍して、新日本は盛り返していきました。だから選手が抜けることは確かにショックだけど、野球もプロレスも新陳代謝を促すという意味では、長い目で見れば必ずしも悪いことばかりではないと思います。