今季カープ投手陣は新外国人であるスコット、DJ.ジョンソン、さらにリーグ3連覇の立役者などリリーフ陣の不振が続くなか、若手投手を中心に徐々に光明も見え始めている。

7月下旬から無失点を続けるフランスア。力強い速球を取り戻し復活を遂げた。

 春先から好調をキープし、プロ6年目で初勝利を記録した塹江敦哉は、結果を積み重ねることで今やセットアッパーの地位を確立した。同じ速球派の島内颯太郎、ケムナ誠も首脳陣の期待に応え、貴重な中継ぎ投手として日々、奮闘中だ。

 適任者不在に悩まされていたストッパーも、7月下旬からフランスアが定着。復調を印象づける好投で、セーブが記録される試合も増え始めた。今回はカープOBの大野豊氏に、後半戦巻き返しの鍵を握るリリーフ陣について語ってもらった。

◆巻き返しの鍵は“リリーフで勝った”と言える試合を増やすこと

 なかなか思うように選手たちが実力を発揮できない中で、佐々岡監督の采配からは『なんとか若手のリリーフ投手を育て上げよう』という思いを感じます。その甲斐あってか塹江、ケムナ、島内という力強い球を投げるパワーピッチャーが徐々に一軍の戦力として台頭してきています。

 中でも塹江はキャンプからここまで調子を維持して、今やセットアッパーの役割に定着しようとしています。彼の球の中で特筆すべきは、独特なスライダーです。直球と同じような軌道を描いた上で曲がっているだけに打者も対応には苦労させられているのではないでしょうか。

 また打たれたことを引きずらず、次の試合でしっかりと球を投げ切れている点を見ると中継ぎ適正がある投手なのかもしれません。実績だけみればこれからですが、セットアッパーを任されているということは、首脳陣からそれだけ信頼されているということです。その点は自信に思って良いと思いますし、これからも堂々とした投球を期待します。

 そして今後の鍵を握ってくるのはストッパーを務めるフランスアがこのままシーズン終了まで突き進んでいけるかということです。3連覇中は中﨑が試合の最後を締めていましたが、僅差で迎えた最終回にそのまま試合を終わらせることができる投手がいるか否かは、チームにとってとても大きなことです。

 最終回に点を取られて敗戦すると非常にダメージが大きいということは、開幕当初のカープを見ても明らかでしょう。7月後半からのフランスアの球の力を見る限り、序盤よりも良い状態のようですし、ストッパーとして期待できる部分は大いにあります。

 2018年に一軍デビューを果たした当初は素晴らしい威力の直球を投げ込み、相手打線を沈黙させていたイメージがあるだけに、フランスアがさらに状態を上げていけば、上位に食らいついていくことは可能だと信じています。

 徐々に勝利の方程式の形が確立されてきたとはいえ、まだ“リリーフで勝った”と言えるだけの試合がほとんどない状況です。打線は得点力に課題があるとはいえ、個々の選手の力は高いわけですし、実際開幕序盤は打線に助けられた試合もありました。

 ここからシーズン終盤に向けて、初めてフルシーズン一軍に帯同するであろう若手投手たちにとっては経験したことがない疲れがたまるとは思います。これまで打線に助けてもらった恩を返すつもりで、リリーフで勝ったと言える試合を、一つでも多くつくってほしいと思います。