◆偉大な先輩左腕から授かった金言
ー佐々岡さんは1990年の入団以来、リリーフ→先発→リリーフ→先発と務めてこられました。これはかつてチームで100勝100セーブを達成された大野豊さんと同じです。
「入団1年目は、球も今より速かったのでとにかく怖いもの無しで、無我夢中で力で勝負していました。その時の初心は今も忘れてはいけないと思っています。ただ年々1球1球の怖さを感じるようになって、当然スピードも最初の頃よりは落ちてくるわけですから、さすがに今ではそういうピッチングはできません。コントロールに気をつけて、丁寧に低め低めを突いて、打たせて取る事を心がけています。ストッパーですから三振を取るのが一番格好がいいのでしょうが、ヤクルトの高津のような、打たせて取るタイプのストッパーもいるわけですし、自分自身も打たせて取るタイプの投手だとわかっています。ただ、いざストッパーとしてマウンドに立ってみると、ついつい力で(笑)ねじ伏せてやろうという気持ちも、多少はありますので……」
ー9月13日・14日の横浜2連戦で連続セーブを挙げて見事100セーブを達成しましたが、両日とも1球1球に、佐々岡さんの気合が伝わってきました。
「100セーブの瞬間はやっぱり三振で決めたかったというのはありました。実際に三振を取ることができましたが、最後のボールはカーブです。ストレートで力一杯、というわけにはいかなかったですね。99セーブ目の試合は1点差で上がったのですが、ストレート勝負に行ったら1アウト1・3塁の大ピンチ。変化球を織り交ぜて三振、ショートゴロでなんとか抑えることができましたが、やっぱり力勝負に臨むと、連打を食らってピンチになるという事なんでしょうか。ストッパーの場合、先発以上に1球1球が大事だから、なおさら1球1球に力が入ってしまうんですよ(笑)」
ー気合いのこもったボールで抑えて、気合いのこもったガッツポーズ。私達ファンから見れば「これが佐々岡さん」だと思っています。
「やっぱり最終回を抑えるのは難しいし、だから燃えてくるものもあります。確かに『先発の時は130キロ後半だけど、抑えになると140キロ出せるじゃないか』ってよく言われますけどね(笑)」
ーただストッパーの辛さ、厳しさもチームの誰よりもよく判ってらっしゃると思いますが……。
「(先発と抑えの)両方やってきただけに、失敗した時に勝ち星を消された先発投手の気持ちも、消してしまったリリーフ投手の気持ちも、両方わかります。だからその分、勝った時の喜びややりがいは大きいですね」
ー大野さんからは、ストッパーについて何かアドバイスを受けた事がありますか?
「1球1球の大事さ、気持ちの持ち方など、抑え・先発にこだわらずいろいろな事を教えてもらいました。僕が入った年にリリーフをやってた時、大野さんは先発。で2年目に僕が先発に回ったら大野さんが抑え。で大野さんがまた先発に戻ったら僕が抑え、というように、ほとんど交互で代わっていました。同じ島根県出身で共に早くから父を亡くしたという偶然もあり、公私にわたって仲良くさせてもらいましたし、目標にしていました。だからそういう意味では、大野さんと同じく100勝100セーブを達成できた事は嬉しいですね」
(第2回に続く)