2022シーズンのルヴァン杯以来となるタイトル獲得に向け、し烈な戦いの続くサンフレッチェ。ここではクラブOB・吉田安孝氏が注目選手をピックアップして紹介する。7連戦を乗り越えた8月を振り返り、もっとも印象的なゴールをあげたのは……。(全2回/第1回)
◆スピード、体幹、テクニック、判断力……印象的だったスーパーゴール
リーグ戦も残すところ後わずかとなりました。今回は、厳しい連戦を戦い抜いた8月を振り返りながら、最終盤戦を迎えるサンフレッチェの注目ポイントについてお話ししていきたいと思います。
まずは8月の連戦について。16日の清水とのリーグ戦から怒涛の7連戦に突入しました。短い期間でアウェイの遠征を含むリーグ戦を戦い、さらに天皇杯準々決勝、ルヴァン杯準々決勝も入る過密日程。そんななかでも特に注目したいのは、8月23日の東京V戦(◯3−0、味の素スタジアム)です。
この試合はなんといっても、カウンターから中村草太が決めた2得点目が印象的でした。
中村の武器はそのスピードと裏へ抜ける技術ですが、この試合では倒れそうになりながらも自らシュートへ持ち込み、さらにゴール前で瞬時に左足に持ち替えてネットを揺らしました。ボールも失わない体幹の強さ、フィニッシュの瞬間に左足に持ち変える判断力、インフロントで回転をかけたシュートの技術、どれをとっても素晴らしい、まさにスーパーゴールでした。あの場面では相手がカウンターを阻止しようとブロックに来ており、相手の足と中村の足が交錯するプレーもありました。倒れていればPKもあり得る局面で、倒れるか続けるかを決めた判断力、そして倒れることなくゴールに持ち込んだ技術。これからのJリーグを盛り上げ、質を上げていくためには、こうした中村のようなプレーが必要なのだと改めて感じた試合でした。
東京V戦は3得点をあげて快勝しましたが、1点目と3点目はセットプレーからの得点です。今シーズン、相手にとってはサンフレッチェのセットプレーは非常に脅威であることは間違いないでしょう。
セットプレーはゴール前で合わせる選手の大きさやジャンプ力に目が行きがちですが、サンフレッチェの強さの秘訣は、両サイドに非常に精度の高いキッカーがいることです。
右であれば新井直人、中島洋太朗、左であれば東俊希もいますし、菅大輝もいます。セットプレーはキックの質が得点を左右すると言っても過言ではありません。そういう意味でも、質の高いキッカーが左右に、それも数枚そろっているのは強みだと言えるでしょう。
セットプレーからの得点が量産できていることで、選手たちも自信を持ってプレーができているのではないでしょうか。セットプレーになれば 「チャンスだ」という共通理解があるからこそ、相手に脅威を与える今シーズンの武器の一つになっているのだと思います。
(後編へ続く)