「3年で一区切り」。そのように評価されることの多い育成選手たちは、限られた時間のなかで支配下登録を勝ち取るべく、日々必死に技を磨いている。育成3年目の今季、悲願の支配下登録を果たし、一軍初登板を飾った辻大雅。育成時代に経験した悔しさを乗り越え、一軍デビューを果たした21歳の言葉をお届けする。(取材は8月末)(全2回/第1回)
◆「プロに入ってから、一番悔しかった」
─7月28日に前川誠太選手と共に支配下登録されました。一軍昇格直後の8月1日には、「まだ一軍の雰囲気に緊張している」と口にされていましたが、1カ月経ってみていかがですか。
「一軍の雰囲気には慣れてきましたが、まだ試合の緊張感には慣れていないかもしれません。ただ、良い緊張感のなかでできているかなと思います」
─一軍では5試合に登板(9月3日時点)しましたが、手応えはいかがですか。
「正直なところ、ここまでうまくいくと自分でも思っていませんでした。今年のシーズン序盤の時点では支配下になれるということも頭のなかになくて、今年は育成3年目ですし、なんとか来年再契約してもらえるように結果を出すしかないと思っていました。そのなかで、春先に三軍調整と言われた時は、気持ちの面でもくじけそうになりました。3年目の自分が三軍にいるのは、もうダメだなという思いがあったので……。すごく焦る気持ちもありました。ただ結果的に、三軍に行ったことが自分にとってもすごく貴重な時間になりました。あの期間があったからこそ、今の自分があると思っています」
─三軍では野村祐輔コーチの指導のもと、球速も上がり制球力も増したと伺いました。具体的にどのようなトレーニングをされたのでしょうか。
「野村コーチには、自分のなかでもあやふやになっていた左足の使い方をもう一度やり直したいと伝えました。野村コーチが現役の時に取り入れていたトレーニングをやらせてもらって、2週間指導をしていただきました。期間の縛りがあったので『かなりきついトレーニングになるよ』と言われていて、覚悟もしていたのですが、思った以上でした。ただ、1日目のトレーニング後にキャッチボールをした時、すごく変わったという手応えがあったんです」