◆持ち味は安定した打撃
— 広角に打てる打撃が持ち味かと思いますが、ご自身としては長所はどこだと考えていますか?
「一番は安定感だと思います。自分としては1打席1打席に、内容が深く、濃い打席を求めており、それをいかに続けられるかがポイントです。それができればいい結果というのは自然とついてくると思いますし、安定した打撃が私の誇りになっています」
— 来日直後の6月30日巨人戦で、『三番・レフト』としていきなりのスタメン出場となりました。かつてアメリカでは初打席初球本塁打という離れ業をやってのけましたが、日本でも初めての試合で一発を放ちましたね。
「あのときはアメリカでの最後の試合から3週間くらいプレーしていなかったんです。だからただ必死に、空振りせずにただ来た球を打つだけ。しっかり打てるかな、という不安を抱えながらの試合でした。そこでホームランを打てたのは、私にとってもびっくりでボーナスみたいなものです」
— 確かに7月までの打率は2割3分9厘と、来日直後はしばらく日本の投手の前に苦しみました。しかし8月は3割6分8厘、6本塁打25打点と成績が急上昇しました。何かきっかけなどはあったのですか?
「考え方にしろ打撃にしろ、変えたことはこれといってありません。来日してからすぐにいい成績を挙げたいとは思っていましたが、3週間のブランクを置いていきなり日本で結果を出すのは現実的に難しいところがあります。ただ、苦しんでいるときでも、いずれは日本の野球に慣れて、打てるようになるだろうと信じていました。結果が残せるようになる直前も、そろそろだろうなと思っていたし、その通り打てるようになりましたね」
— メジャー経験が豊富なだけに、常に自信を持っていたのですね。
「自信というよりも、どういう打撃をしたいのかという打席の中でのプランはしっかり持っていたと思います。いかにそれを毎日続けられるかが重要でした。いつも結果に繋がるわけではないですが、プランさえ持って、数多く実行すればいい結果が付いてくるということは信じていました。以前は打ちにいって打席でバタバタしていましたが、今はタイミングがしっかりと取れて球がしっかり見えていますね」
— 日本の投手とメジャーの投手の違いはどこに感じますか?
「最も大きな違いは球速だと思います。平均的にアメリカの方が上で、投球スタイルも『これが俺の真っ直ぐだ、打ってみろ』『これが俺の誇れるスライダーだ、打ってみろ』といったように、自分の力を活かして勝負してきます。日本は直球でも変化球でも制球がよく、ボール球で誘うことが多いです。すごく速い球を見せたと思えば次に緩い変化球が来るというように緩急を使って組み立てたり、カウントによって球種を絞れないほど豊富な球種を使うなど、配球面も大きく違います」
— そんな日本の投手に対抗するために、打席の中ではどのようなことを意識していますか?
「打者の基本というのは、アメリカであろうと日本であろうと変わりません。投手の一番速い球にタイミングを合わせて打席に立ち、そこから対応していきます。日本ではどんなカウントでも『次は真っ直ぐが来る』と決めつけはできないので、いろんな変化球を頭に入れながら、ストライクの球を打ちに行きます」
— 打席に入る際にはルーティーンがありますね。バットを肩から振り回したり、打席では少しの土を拾って足下にまいたり、地面にバットで線を引いたり。何か意味があるのですか?
「バットを振り回すのは体をしっかりと動かしてリラックスできるようにするためです。土を拾うのは、以前は私は革手袋を付けていなかったので、土を滑り止めとして手のひらにすり込んでいたんです。今は革手袋を付けているので本当は必要ないのですが、何年もやってきたので土を拾うことは続けており、何もせずそのまま捨てています。それ以外にも足下にバットで線を引いたりするなど、いろいろありますね」
(後編へ続く)
