2022シーズン以来のルヴァン杯を奪還し、さらに注目の集まるサンフレッチェ広島。リーグ戦、天皇杯、ACLEと負けられない戦いが続くサンフレッチェだが、シーズン最終盤戦に向け特に『カギ』となる選手は一体誰なのか。ここではクラブOB・吉田安孝氏が、特に注目の選手をピックアップして紹介する。(全2回/第2回)

広島が誇る鉄壁3バックの一角として、数々のピンチを凌いできた塩谷

◆ピッチで戦う選手の背中を押す『12番目の選手』

 残り試合数もあとわずかとなった今、自分たちにとっては絶対的な自信のある武器を持っていることは非常に有利に働きます。「コーナーキックを取り行く」のではなく、これまでのサンフレッチェの戦術通り、相手陣内で全員で果敢にプレスをかけ続ければ得点のチャンスは必ず巡ってきます。ラインを高く保ち、前線からプレッシングしてミスを誘う。そして交代選手をうまく使いながら、最後の瞬間までチームとして戦うことができれば、確実にタイトルに近づいていくことができると思います。

 ここで特に注目の選手を挙げるとすれば、塩谷司です。9月23日の柏戦 (三協フロンテア柏スタジアム、△0−0)ではそれまでの3バックではなくボランチとして出場しました。本人も話していた通り、ほぼぶっつけ本番のような器用だったといいます。ボランチでのプレー経験があるとはいえ、スキッベ監督のもとでは最終ラインで起用され続けていたなかで見せた高いパフォーマンスと安定感はさすがの一言でした。

 塩谷にしても佐々木翔にしても昨シーズンまで、ほぼフル出場でチームに貢献してくれた一方で、終盤になると連戦の影響が出てきたように見えていました。ただ今シーズンはDFラインに山﨑大地やキムジュソンが加わったことで、選手を休ませながらハイパフォーマンスを引き出すことができるようになっています。高いレベルの選手がそろっているからこそ、選手を入れ替えつつ勝ち上がっていくことができているのだと思います。

 試合数が多くなるということは、プロの選手としてはやりがいのあるシーズンになっているはずですし、出場機会の少ない選手たちにとってはチャンスが増えることにもなりますから、モチベーションも上がるというものです。ベテランにしても若手にしても、「自分にもチャンスが来るはずだ」というメンタリティで、良い雰囲気のなかで日々のトレーニングができているのではないでしょうか。

 連戦、海外移動の疲労はもちろんありつつ、勝つしかない試合が続くことで、目の前の一戦への集中力もぐっと増しているはずです。そして、選手たちの背中を強力に押しているのは、他でもない 『12番目の選手』であるファン・サポーターの声援です。

 スタジアムで感じるサポーターの後押しの力は、選手たちに大きな力を与えています。町田戦後のインタビューでトルガイもファン・サポーターへの感謝を口にしていましたが、その力強さは選手たちが一番感じているはずです。

 試合展開が苦しければ苦しいほど、競り合いになればなるほど、選手の足を動かしてくれるのはファン・サポーターの声なのです。まだまだ痺れる苦しい試合が続くサンフレッチェですが、選手、クラブ、ファン・サポーターがひとつになって、シーズン最後には最高の結果をつかめることを期待したいと思います。