温かい人柄でチームメート、ファンに愛され、卓越した打撃力で応え続けた松山竜平。カープ一筋18年、近年は代打として抜群の存在感を見せてきた男がチームを去った。常に全力で大好きな野球に向き合ってきた背番号55が、カープで歩んできた道のりと支えてくれたファンへの感謝、そして、新たな舞台へ挑戦する覚悟と決意を語った。(全2回/第1回)
◆2025年は悔しい結果も、引退する気持ちは全くない
─新井貴浩監督が『変化の年』を公言した2025シーズンでした。プロ18年目を迎えた松山選手としては、どのような思いでシーズンを迎えましたか?
「シーズンに向けてしっかり体もつくりかえていましたが、正直ここ数年で一番体調も良い状態だったので、少しでも一軍でチームの力になれればな……と思っていました」
─開幕後に故障もあり、二軍でのプレーが続きました。
「ケガもありましたけど、そんな大したものではなかったので、そこから早く復帰したい気持ちだけでした。ただ、その中で二軍での試合も数試合しか出場できなかったので不完全燃焼でした。バッティングの状態もずっと悪くなくて、どちらかと言えば感触は良かったんです。二軍での出番は1打席だとか、DH、たまに守備からの試合もあったのですが、なかなか結果は出せませんでしたね……」
─二軍では若手選手と一緒にプレーする時間が多くありましたが、彼らをどのように見ていましたか?
「みんな本当に頑張っているのですが、その頑張りを形にできていないというか、もう少し考えてやっても良いんじゃないかと思うことが多々ありました。僕としては彼らに対して自然体と言うか、いつも通りの感覚で教えたり、アドバイスをしたりしていました。あまり気ばかりを遣っていたら、言いたいことも言えなくなってしまいますからね(苦笑)」
─若手の姿から刺激を受けることはありましたか?
「(田中)広輔や堂林(翔太)や山足(達也)とか、経験がある選手もずっと二軍にいましたけど、若手も含めてみんな一緒のことをやるので、そこで手を抜かないこと、練習の姿をしっかり見せないといけない、そういう意識を持っていました。僕は普通にやっているだけでも『40歳なのにすごいな』と言われたりすることもありましたが、『普通のこと』と思っていましたけどね(笑)。特にバッティングに関しては『いつも、こう考えてやっているよ』と若い選手に見せていたつもりです」
─来季構想について球団の判断を聞いた時の率直な思いを聞かせてください。
「覚悟というか、その話合いになるということはわかっていたので、『そのことだろうな』と思っていました。『引退試合も考えてるけどどうする』と言われて、『僕はまだやりたいので、そういうのはなしでお願いします』と伝えさせていただきました。8月に入った時点で『一軍に呼ばれることはないかもしれない』と思っていたのですが『このままでは終われない』という思いで、用意はしていました」
─決断に迷いはなかったのでしょうか。
「全くなかったです。家族にもあらかじめ『多分そういう話があるけど、俺はやめないよ』と言っていました。正直なところ、嫁さんは2、3年くらい前から『もう良いよ』と言っていたのですが、僕がまだまだやりたいという思いが強いので、そこは尊重してくれて、『やれる限りやって良いよ』と言ってくれました」

