◆「やっぱり野球が好き」。現役続行にこだわる最大の理由

─松山選手の野球に対する情熱、まだ続けたいという思いの一番の理由を聞かせてください。

 「これは単純ですね。やっぱり野球が好きだからです。小さな頃から野球が好きで、野球を始めて、プロになって……。もう自分の体も動かないだとか、本当に無理だと思うまでやりたいんですよね」

─10月4日のシーズン最終戦に出場することは、どのタイミングで決定したのですか?

 「退団を発表してから1週間もなかったですね。二軍の由宇での最終戦が終わって、そのあと、尼崎への遠征にも帯同していました。広輔と僕は『もうこれで終わりだな』と話していたのですが、新井監督から電話をいただいて『え!?』という感じでした。『最後はファンのみなさんに見てもらいたいし、功労者だから、10月4日は一軍の方で試合に出てくれ』と直々の言葉をいただきました」

─監督からの直接オファーについてはどんな気持ちでしたか?

 「予想していなくて、遠征先の尼崎にも家族や鹿児島から親戚が来ていて、僕の中では終わったと思っていたので、びっくりしました。チームはシーズンBクラスは決定していましたけど、『出て良いのかな』という気持ちはありました。でも監督がそういう風にしてくださったのであれば、出た方が良いと思い決めました」

─10月4日は今季初の一軍でした。

 「正直どうなるかな? と思っていたのですが、あれだけ大勢の人が来てくれたので、素直にうれしかったです。僕と広輔はまだ人気があるなと思いました(笑)。『スタートで行くか?』と言われていたのですが、『代打の一打席で大丈夫ですよ。そっちの方が盛り上がると思います』と言わせてもらいました(笑)」

─末包昇大選手が、松山選手の登場曲を使って打席に入っていましたね。

 「素直にうれしかったですね。ただ、あいつには似合わなかったです(笑)。彼はそういうのが結構好きなタイプですからね。かわいい後輩です」

─松山選手が代打で登場時は、すごい歓声で迎えられました。あの場面を振り返っていかがでしたか?

 「すごく思い出に残る大歓声をいただいてうれしかったですね。ただ、ノーアウト一塁だったので、『これでゲッツーを打ったらどうしよう』と思っていました。出番も『最終回に行くのか』と(笑)。『ゲッツーを打ってもしゃーない!』と思って臨んだら……案の定でしたね(苦笑)。正直泣きそうでしたけど、『まだ引退をしないし』と思って、そこは涙をこらえました」

─最後のスピーチでは今後の意気込み、そして後輩への温かい内容でした。

 「言うことは大体決めていたのですが、あそこに立ったら真っ白になってしまって……。そこからは、素直に自分の言葉で話そうと思いました。なので、あの時に話したことは僕の正直な言葉です」

(後編へ続く)