今シーズン、カープは苦しい戦いを強いられる中で、若手や中堅などこれまでに出番の少なかった選手が存在感を発揮している。

 8月28日、カープが今季初のサヨナラ勝ちを記録。同点の9回1死一、二塁の場面で、値千金の一打を放ったのは上本崇司。苦しい戦いが続く中で、価値あるサヨナラ打だった。

明治大からドラフト3位でカープに入団した上本崇司選手。

 これまではムードメーカーとして取り上げられることが多かったが、今季は春先から課題とされていた打撃で猛アピールを続けてきた。自らの手でつかんだ今季7度目のスタメン。しかし9回表の守備で失策を記録。サヨナラ打は、そんな悔しさを味わった直後での打席だった。

 そんな状況下で生まれた一打だけに、上本にとっても特別な一打となったはずだ。勝利が決まった瞬間、上本の表情を包み込んだのは笑顔ではなくうれし涙。ルーキーイヤー以来7年ぶりとなる打点は、チームに勝利をもたらす価値ある得点となった。

 ここでは、プロ入り初のサヨナラ打を放った上本の、ルーキーイヤーのインタビューを改めて振り返る。
(『広島アスリートマガジン』2013年5月号掲載・表記は当時のまま)

◆広陵高時代の同級生の中田廉がいたので、かなり助かりました

― プロ入りされて約4カ月経ちましたが、プロの雰囲気には慣れましたか?
「だいぶ慣れましたね。チームに広陵高時代の同級生の中田廉がいたので、かなり助かりました。他の同期よりも少しだけ入りは良かったと思います(笑)。カープ入りが決まった後も、何回も連絡を取り合っていました」

― 3月の実戦に入ってからは教育リーグで猛打賞をマークするなど、良い出だしでした。
「自分自身でも実戦向きだと思っています。練習で打てなくても実戦で打てればいいという感覚でやっています。でも、安打が出たのはたまたまです。守備も走塁もまだまだですが、僕の場合は打撃が一番の課題だと思っているので、もっとレベルを上げていかないといけないと思っています」

― しかし、開幕前のオープン戦では一軍に昇格し、安打を放ちましたね。
「たまたまです。あれは奇跡に近いです(苦笑)。ちゃんと狙った球が打てて、運良く一球で仕留めることができました」