2025年シーズンを象徴する選手のひとりであり、今シーズンのさらなる飛躍を期待された中村奨成。開幕を一軍で迎えたものの、22試合に出場し打率1割台と苦しんだ。4月末には一軍登録を抹消され、5月1日から三軍での調整が発表された。

 昨シーズン、二軍で苦しんでいた中村に寄り添い、飛躍のきっかけを与えたのが福地寿樹コーチだ。今シーズンから一軍打撃チーフコーチを務める福地コーチが昨年語っていた、中村奨成への思いを改めて振り返る。(『広島アスリートマガジン2026年1月号』掲載記事を再編集)

今季はここまで59打数10安打0本塁打。打率.169と苦しんでいる中村奨成

◆奨成の口から出た、「打てるならなんでもやります」

 2023年にカープの二軍打撃兼走塁コーチに就任して、私は(中村)奨成と同じチームとなりました。彼が捕手から外野手へ登録変更されたのも、ちょうどその年です。

 当時の彼は、二軍では結果が出るものの、一軍に呼んでもらうと結果が出ない。その繰り返しで、年々厳しい立場に追い込まれていました。

 周りはそうした厳しい状況を気づかせようとしましたが、奨成はわかっているようでありながら、核心の部分ではまだ納得し切れていないように見えたのです。背番号を重くする、ドラ1だと言われるけれど、そんな扱いはしない……と何度も伝え、こちらとしても、甘やかさない、けれどチャンスは与えるというスタンスで接することにしました。

 そのうちに、本人がインタビューなどで「今年が最後。後がないと思っている」という言葉を口にするようになりました。私は『彼が自らその言葉を発するようになった、その時こそがチャンス』だと思っていました。自分から発信することで、本当に自分自身を窮地に追い込むことになると思っていたからです。そして私は、彼は『追い込まれたほうが力を発揮するタイプ』だと捉えていました。逆境を跳ね返す反骨心をもともと持っている選手ですから、それが良い方向に影響したのだと思います。

 そして2025年の春、オープン戦でも打てず、同じような凡打を繰り返す姿と彼の表情を見て、『このままでは見切られるかもしれない』と感じ、彼と話をすることに決めました。

 2人だけで話をするなかで、打撃フォームの変更を提案しました。「変えるともう戻れないぞ。その覚悟はあるか?」と聞くと、「打てるなら何でもやります」と言うのです。その時、今の奨成ならきっと飲み込んでくれるだろうと感じました。

 プロ野球選手は、ファンの期待に応えなければなりません。期待に応えることができたら、次はファンの願望を叶えなければならない。願望というのは、例えば『打率何割以上だ』、『タイトルだ』、『ホームラン何本だ』というものですね。ただ奨成には、まずは謙虚にいきながら、数字も残せる選手として活躍してもらいたいと思っています。

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