奥川恭伸(ヤクルト)、佐々木朗希(ロッテ)など高校生の有望株が注目選手として話題を集めていた、2019年プロ野球ドラフト会議。現在カープの一軍先発ローテーションとして活躍し、新人王の獲得を視野に入れる森下暢仁も、約1年前は多くのドラフト候補選手と同様に、指名の瞬間を待っていた一人だった。

カープからの指名後、明治大学在籍中に本誌の単独インタビューに応じる森下暢仁投手。

 だが人生の帰路とも言えるこの瞬間を待つにあたり、森下の場合は多くのドラフト候補とは異なりいつもと変わらぬ、平静さを保つことができていた。

「カープから指名を公言して頂いてたので、指名の有無で悩むことがなかったのが大きいと思います。前の夜も普通に寝ることができていました(笑)。(実際に名前が呼ばれ)舞い上がるとか喜ぶという気持ちはあまりなくて、『プロの世界でも通用するのか』と身が引き締まる思いの方が強かったですね」

 10月中旬の時点で、カープは森下をドラフト1位で指名することを公言。『本命隠しの作戦か』と疑う節もあったが、カープはドラフト当日、見事に“有言実行”を果たし森下をドラフト1位選手として指名。他球団は、将来性を見込み高校生の有望選手に指名を集中させたこともあり、明大のエース・森下暢仁はカープが単独指名し、その交渉権を獲得することとなった。

 チーム再建に着手していた佐々岡真司監督も「満点のドラフト」と語るなど、大学生No.1投手として注目されていた存在をまさかの競合なしで指名することができたカープ。結果的には、1年目から大車輪の活躍を果たす未来のエース候補を獲得した、近年稀に見る“成功”ドラフトとなった。

 毎年、各球団の思惑が複雑が絡み合うことで、思いも掛けない結果が生まれるプロ野球ドラフト会議。今年はどんなドラマが待っているのだろうか。